伝説のSUVが帰ってくる 7年ぶり復活『パジェロ』に込めた三菱の戦略

2026年05月30日 18:27

パジェロ

2026年秋に世界初公開される新型『パジェロ』のティザー画像(三菱自動車提供)。2019年の国内生産終了から7年ぶりの復活となり、電動化時代における同社の新たなフラッグシップ戦略として注目を集めている(画像は三菱自動車ニュースリリースより)

今回のニュースのポイント

三菱自動車工業は29日、新型クロスカントリーSUVの車名を『パジェロ』に決定し、2026年秋に世界初公開すると発表した。国内向けの日本仕様は2019年に生産を終了しており、実に7年ぶりの復活となる。新型モデルは、同社の高い堅牢性を誇るピックアップトラック『トライトン』のラダーフレームをベースに改良を施し、専用開発のキャビンや前後サスペンションを組み合わせることで、卓越した悪路走破性と上質な乗り心地を両立させる計画だ。電動化やソフトウェア化が急進する現代の自動車産業において、自社の原点である四輪制御技術とブランドストーリーを全面に押し出す、同社の新たなグローバル市場向けフラッグシップ戦略としての側面が注目されている。

本文
 29日に発表された三菱自動車の看板モデル『パジェロ』の復活は、世界の自動車市場における同社の立ち位置とアイデンティティを再定義する象徴的な一手として受け止められています。1982年に初代モデルが誕生したパジェロは、クロスカントリー4WD車が持つ本格的な悪路走破性と、乗用車としての快適な居住性を高い次元で融合させた新しいコンセプトのRV(現在のSUV)として市場を開拓しました。以降、4世代にわたり世界170以上の国と地域で累計325万台以上を販売し、国内における90年代のRVブームを牽引するなど、同社ブランドを世界規模へ押し上げた象徴的な存在です。

 1983年から参戦した世界一過酷とされるダカールラリーでは、7連覇を含む通算12勝という圧倒的な実績を残し、過酷な環境下における高い耐久性と信頼性、操縦安定性を実証してきました。日本仕様の2019年生産終了、および海外向け仕様の2021年生産終了を経て、今回の復活はグローバル市場を見据えた戦略的判断によるものとみられます。

 近年の世界のSUV市場を俯瞰すると、乗用車のプラットフォームをベースにした都市型の「クロスオーバーSUV」が主流を占めるようになっています。こうした競争環境のなかにあって、2026年秋に公開される新型パジェロは、同社の堅牢なピックアップトラック『トライトン』のラダーフレーム構造をベースに採用し、本格的な悪路走破性能を持つ堅牢なオフローダーとして開発が進められています。世界的なSUV需要が依然として底堅く推移するなか、過酷な路面状況への対応力や耐久性を重視するグローバル市場においては、こうした純粋なクロスカントリーSUVに対する一定規模の需要が存在するとみられています。

 同社が長年ラリー活動などで鍛え上げてきた四輪制御技術や、ピックアップトラック開発で培った知見という独自の強みを最も直接的に発揮できるセクターへリソースを集中させる判断は、巨大自動車メーカーとの全面的な規模の競争を避け、独自の強みを持つ領域で確固たる存在感を示す戦略とも合致していると考えられます。

 産業全体の潮流として、近年の自動車業界は電動化(EV化)やソフトウェア化、自動運転技術の進展といったドラスティックな構造変化のただ中にあります。しかし、技術的なスペックや効率性が追求される時代だからこそ、移動そのものがもたらす情緒的な価値、すなわち「どこへでも行ける」という信頼感や冒険心を刺激するブランドストーリーの重要性が世界規模でむしろ高まっているとの指摘もなされています。

 ユーザーが車両に求める価値が多様化するなかで、パジェロが過去の歴史のなかで培ってきた「悪路を走破し、確実に目的地に到達できる」という信頼の遺産は、現代の市場においても他社が容易に再現できない大きな強みとして機能する可能性があります。

 三菱自動車が開発を進める新型パジェロは、自らの原点である「四輪制御」と「冒険心」を体現する新たなフラッグシップモデルと位置づけられています。先進技術と本格SUVとしての堅牢性をどのように両立させるのか。三菱自動車が示す答えに注目が集まりそうだ。2026年秋の世界初公開は、往年の自動車ファンのみならず、激変する自動車産業全体の戦略的な動向を見極める上でも極めて重要な試金石となる見通しです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)