LiDAR(レーザー計測)を搭載したドローンが取得した秋芳洞内部の3Dデータ。人が立ち入りにくい未踏エリアを可視化し、環境保全と新たな観光資源の創出を目指す国内初の共同調査プロジェクト。(写真:日本航空・美祢市・九電ドローンサービス)
今回のニュースのポイント
日本航空、山口県美祢市、九電ドローンサービスは、日本最大級の鍾乳洞「秋芳洞」で国内初となるドローンを活用した鍾乳洞調査プロジェクトを開始しました。LiDAR(レーザー計測)などを備えた機体を活用して、滑落や天井崩落の危険がある未踏エリアを安全に可視化し、環境保全と新たな観光資源の創出を目指します。地域が持つ独自の自然資源をデジタル技術で「見える化」し、その価値を高めていく観光DXの先駆的な取り組みとして注目されます。
本文
日本航空(JAL)、山口県美祢市、九電ドローンサービス(QDS)の3者は、総延長11.2キロメートル以上を誇る特別天然記念物の鍾乳洞「秋芳洞」において、国内初となるドローンを活用した共同調査プロジェクトを開始しました。2026年6月23日から始まったこの取り組みは、3か年計画という中長期のロードマップの下で推進されます。暗闇や狭所が多く、滑落・天井崩落の危険が付きまとう洞窟内部において、これまで人手による調査が困難だった未踏エリアの解明と、高精度な3Dデータの取得に挑戦しています。
今回のプロジェクトにおける最大の特徴は、ドローン技術の検証や学術的な洞窟調査そのものだけが目的ではないという点にあります。真の狙いは、収集した高精度な定量データを多角的に活用し、環境の「保護・保全」と、新たな観光資源の「創出・活用」を高い次元で両立させることにあります。秋芳洞を擁する美祢市全域は、2026年4月23日に「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されたばかりです。国際的価値が認められた地質・地形遺産を確実に次世代へ繋ぎながら、同時に持続可能なジオツーリズムを駆動していくという、官民連携による先駆的なビジョンがこのプロジェクトを支えています。
この挑戦を実務面から可能にしているのが、QDSが投入したスイス・Flyability社製の球体ドローン「ELIOS 3」です。GPSの電波が届かない非GPS環境下でも自律的な飛行を維持でき、外殻の球体ケージによって狭所や暗所での衝突にも耐えうる点検特化型の機体です。搭載されたLiDAR(レーザー計測)システムは、暗闇に閉ざされた洞窟地形をリアルタイムにスキャンし、高精細な3Dモデルとして画面上に可視化します。これにより、これまで把握すらされていなかった地質構造や生態環境、さらにはケイビング(洞窟探検)ルートとして活用し得る新たな空間の探索が、極めて安全かつ迅速に行えるようになりました。高精度な3Dモデルによる地域資源の「見える化」は、学術研究の発展のみならず、確固たるエビデンスに基づく環境管理の基盤を構築します。
従来の地方創生や観光振興の文脈では、巨額の財政資金を投じて新しい観光施設を建設したり、大規模なインフラ開発を行ったりする手法が一般的でした。しかし、今回JALが全体統括として設計した観光DXモデルが示しているのは、地域の自然や歴史という「すでに存在する唯一無二の資産」の魅力を、デジタルの光によって再発見・再定義するという思想です。地域の資源価値を客観的データとして定量化し、その安全な管理体制と持続可能な観光コンテンツを同時にパッケージングしていくこの手法は、莫大なインフラ投資に頼らない、全国の自治体や観光地における地域資源活用の新たなモデルとなる可能性があります。 (編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













