今回のニュースのポイント
令和8年度税制改正では、登録免許税について住宅再生や地域課題への対応を重視した見直しが行われます。老朽マンションの建替え・再生を支援する措置の延長や、医師不足地域で診療所を整備する際の負担軽減策を新設します。また、災害による土地問題への対応も盛り込まれており、人口減少や高齢化が進む社会で、生活基盤を維持するための税制活用が進められています。
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令和8年度税制改正に関連する改正法は2026年3月31日に成立し、同日に公布されました。今回の税制改正において、暮らしや街づくりに関わる分野で注目されるのが、登録免許税関連制度の見直しです。登録免許税は、不動産の取得や会社設立、権利の移転に際して登記を行う際に発生する税金であり、普段の生活ではあまり目立つ存在ではありません。しかし今回の改正では、老朽住宅の再生、地方医療の維持、あるいは震災からの災害復興という、現代の日本社会が直面する重要な生活基盤の課題を解決するための政策手段として、大きな見直しが図られています。
生活に密着した最大の柱となるのが、老朽化する高経年マンションの問題への対応です。現在、国民の1割以上が居住するとされるマンションですが、建物の高齢化と住民の高齢化という「2つの老い」が急速に進行しています。古いマンションでは修繕の困難さや建替えに向けた合意形成、安全性の確保が重要な課題です。これを受け、改正法ではマンション再生事業や一括売却を伴うマンション等売却事業について、権利変換手続開始の登記などの免税措置を整備した上で適用期限を2年延長しました。さらに社会情勢の変化に合わせ、対象となる住戸の専有床面積要件について、従来の50㎡以上から40㎡以上へと引き下げる見直しも行われています。また、新たな手法である「マンション除却事業」に伴う登記も免税措置の対象に追加され、老朽住宅の円滑な再生や更新を促しています。
第二の柱は、地方の医療基盤を守るための診療所支援です。人口減少が進む地方では、医師不足や診療所の減少が加速しており、必要な医療にアクセスできない「医療空白地域」の発生が危惧されています。この地域医療体制の維持を図るため、今回の改正では医師の確保が特に必要な区域として都道府県が定める対象区域を対象に、診療所の用に供する建物を新築・取得した場合の登録免許税を軽減する措置が新設されました。具体的には、所有権の保存登記の税率を1,000分の2(本則1,000分の4)へ、移転登記を1,000分の10(本則1,000分の20)へと引き下げます。これは単なる税務上の優遇にとどまらず、地域に医療インフラを維持し、住民の生命線を守るための明確な政策誘導の視点が置かれています。
第三の柱が、能登半島地震などの自然災害からの復興と土地問題への対応です。同地震では大規模な地盤の液状化により、地盤が水平方向に移動する「側方流動」が多発しました。この結果、登記上の客観的な境界(筆界)と現実の土地の現況にズレが生じ、復旧・復興に向けた重大な障壁となっています。土地の境界を再確定して再整備を行うには分筆や所有権の移転登記が必要となりますが、被災者にその登記費用が重くのしかかることが課題でした。そこで改正法では、液状化被害を受けた一定の土地について、分筆後の所有権の移転登記に係る登録免許税を1年間に限り免税とする措置を新たに創設しました。被災地の自発的な取り組みではないやむを得ない登記に対し、税制面から負担を軽減することで、復興手続きの円滑化を税制面から支援しています。
このように、これまでの登録免許税が有していた「登記手続に伴って税金を徴収する」という受動的な仕組みから、現代の税制は「社会課題を解決するために人や資金を動かす政策手段」へとその役割を変化させています。今回の改正で扱われた優遇措置や免税枠の新設は、まさに住宅、医療、災害という日本が抱える構造的な課題に対して税制を直接作用させる試みそのものです。今後は税制のあり方についても、単なる負担の調整役にとどまらず、社会の持続可能性を担保するための仕組みとしての重みがさらに増していくことになりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













