積水ハウスグループが15日、2012年度中期経営計画を発表した。現在進めている2010年度中期経営計画が順調に進んでいることを踏まえたもので、事業ドメインを「住」に特化した成長戦略を展開して利益成長の加速を図り、「戸建住宅では年17000棟の実績で、業界2位~4位の会社に対して、当社を100とすれば60から50といったところ。これを全てダブルスコアに引き離すべく、首都圏や近畿圏などをテコ入れし、シェアアップを図る」(同社広報部)という。
2010年度計画が当初計画以上に進んだことで、既に戸建住宅事業や賃貸住宅事業で10%以上の営業利益率を達成している積水ハウスグループ。この筋肉質な収益構造をベースに、新中期経営計画では、これまで手掛けてきた多岐にわたる先進技術や暮らし方の提案等を、統一したブランドビジョン「SLOW&SMART」に集約。8つの事業セグメントを請負型、ストック型、開発型の3つのビジネスモデルで事業を推進し、事業拡大、強いては利益成長を目指すとのこと。
請負型ビジネスにおいては、消費税増税の影響はあえて織り込まなかったが、主力の戸建で3%、賃貸で7%程度の毎年の成長を図るとしている。環境配慮住宅を軸とした足元の受注も堅調なことや、相続税対策を巡る土地活用の動きが活発化していること、サービス付き高齢者住宅などの需要も今後は期待できるため、高級住宅のシェアを伸ばすことは可能だという。
また、顧客満足度(CS)の高さでは定評があり、累積建築戸数211万戸に及ぶ良質な住宅ストックを有している同社は、既にストック型ビジネスの売上が売上全体の3割を占めている。リフォーム事業に関しても、営業利益率は10%を確保しており、これらで得られたキャッシュフローを活用して、開発型ビジネスを展開。国内では大型オフィスビルなどの再開発や大都市での高級賃貸マンションなどを開発し、今後はREIT市場での売却も計画している。住居系では積水ハウスSI投資法人と組み、年度毎で100億円規模の売却・運用を目指すという。さらに国際事業では、既に着手している豪州、米国、シンガポール、中国での開発で2180億円を先行投資しているが、回収期に入ることから最終年度には売上2000億円、営業利益273億円を達成する見込みである。
これらを踏まえ、2015年1月期には売上高は2011年度実績比24%増となる1兆9000億円、営業利益では同89%増の1340億円を見込む。また、これまでの構造改革による収益体質強化により、ROEは同3.9%だったものが9.8%と大幅に改善する。v
なお、同時に今年度の業績予想を修正し、売上を300億円減の1兆6200億円とした。これは、開発事業のオフィスの売却を延期したことによるもの。一方、営業利益は収益構造改革が進んだとして、850億円の予想は据え置いている。
少子高齢化で競争が激化する住宅市場。各社とも利益が圧迫されがちな時期だが、住宅トップとして「住」に特化するというブランド戦略で高収益を果たすという同社の戦略はしばらく注目を集めそうである。