住宅大手、業績に明暗 戸建・賃貸・開発、決算に映る「稼ぎ方」の違い

2026年08月24日 12:07

住宅

住宅大手各社の決算では、戸建住宅の販売動向に差がみられる一方、賃貸・管理、都市開発、物流・データセンター、海外住宅など収益源の多様化が進んでいる。各社の「稼ぎ方」の違いをイメージした画像。

今回のニュースのポイント

住宅関連各社の決算では、同じ住宅市場を舞台としながら業績に明暗が分かれました。大和ハウス工業や飯田グループHD、オープンハウスGでは戸建住宅などが業績を押し上げた一方、積水ハウスや積水化学工業では新築戸建の利益や販売棟数が前年同期を下回りました。ただ、住宅各社の収益源はすでに新築戸建だけではありません。賃貸住宅や管理、リフォーム、不動産開発、事業施設、さらには海外住宅まで広がっています。各社の決算からは、住宅市場全体を単純な「好調」「不調」では捉えきれない、事業構造による収益力の違いが浮かび上がっています。

■ 同じ住宅市場で生じた「明暗」の謎

 国内においては建設コストの上昇や住宅ローン金利の動向など共通する事業環境がある一方、直近の住宅大手各社の決算を並べてみると、その業績結果には鮮明なコントラストが描かれています。

 大和ハウス工業の2027年3月期第1四半期連結決算は、売上高が前年同期比9.0%増の1兆4,083億8,500万円、営業利益が同10.6%増の1,306億4,400万円となり、通期業績予想を上方修正しました。飯田グループホールディングス(HD)も第1四半期の営業利益が同81.3%増(257億43百万円)と大きく躍進し、オープンハウスグループ(G)の第3四半期累計決算も営業利益が同18.3%増(1,209億59百万円)で通期予想を引き上げました。

 一方で、積水ハウスの2027年1月期第1四半期決算は全社営業利益こそ同26.2%増の761億4百万円と伸びたものの、主力の戸建住宅事業の営業利益は同33.2%減(44億7千4百万円)と縮小しました。また積水化学工業の2027年3月期第1四半期決算でも、住宅カンパニーの営業利益が前年同期比36.5%減(56億円)と苦戦を強いられています。同じ市場環境にありながら、なぜこれほどまでに業績の方向性が分かれるのでしょうか。

■ 「戸建苦戦」と一括りにできない実態

 各社の業績差を紐解く第一の鍵は、「戸建」市場の需要の現れ方です。

 新築戸建の苦戦が目立った積水ハウスや、新築戸建の売上棟数減少が響いた積水化学工業の数字だけを見ると、戸建需要全体の冷え込みを連想しがちです。しかし、飯田グループHDでは市中在庫の調整が進んだことなどを背景に戸建分譲の販売が力強く回復し、大幅な増益を達成しました。さらに大和ハウス工業でも戸建住宅事業の営業利益が前年同期比29.2%増(92億5,500万円)と伸長し、オープンハウスGでも戸建関連事業が同10.5%増(618億40百万円)と堅調な推移を見せています。

 少なくとも各社の決算を見る限り、新築戸建を一括して「不振」と捉えることはできません。商品構成や販売地域、販売形態などが異なるため、需要や収益の表れ方には企業ごとの差があると言えます。

■ 積水ハウスに見る「開発・ストック型」の強み

 第二の鍵は、新築戸建以外の「収益の柱」をどれだけ保持しているかという点です。

 積水ハウスでは、戸建住宅事業の営業利益が同33.2%減となった一方で、全社の営業利益は761億4百万円と2割を超える増益となりました。この穴を埋めて全社業績を強力に押し上げたのが「開発型ビジネス」です。マンション事業の営業利益が前年同期比約6.3倍の158億72百万円へ急拡大したほか、都市再開発事業も同130.3%増の96億44百万円となりました。さらに、賃貸住宅管理事業などの「ストック型ビジネス」も利益を伸ばしています。住宅を「建てる」請負だけでなく、「開発する」「管理する」事業が全社業績を支える構造が表れています。

■ 大和ハウスは非住宅へ拡張、積水化学は既存住宅ビジネスへ

 事業領域の広がりという点では、大和ハウス工業のポートフォリオも極めて多角的です。同社は戸建住宅の増益に加え、賃貸住宅事業の営業利益が前年同期比12.6%増(428億6,800万円)、物流施設やデータセンター建設を含む事業施設事業が同13.5%増(544億200万円)と、賃貸住宅や事業施設など非住宅領域の利益貢献も大きくなっています。2026年4月には「データセンター事業本部」を新設するなど、従来の住宅大手の枠組みを超えた事業展開を進めています。

 一方、積水化学工業の住宅カンパニーは、新築戸建の引き渡し減から減収減益となりましたが、受注面では集合住宅や単価上昇によって前年同期を上回る推移を見せています。加えて、定期診断を起点としたリフォーム事業や、賃貸管理戸数を伸ばす不動産事業といった既存住宅・ストックに関わる収益機会も広がっています。

■ 「都市部」「海外」それぞれの成長アプローチ

 さらに独自のアプローチで成果を上げる企業もあります。オープンハウスGは、需要が根強い都市部での戸建販売に加え、富裕層や法人向けの収益不動産事業が営業利益12.1%増(163億70百万円)と好調に推移し、マンション事業の黒字化も重なって業績を押し上げました。

 また、住友林業は主力の米国住宅市場において大型買収(Tri Pointe Homesの取得)を敢行しました。大型買収に伴う会計上の影響などから、中間期の海外住宅セグメント利益は前年同期比38.6%減(457億1百万円)と減少しましたが、売上高は同26.5%増の7,225億33百万円へ拡大。買収効果による収益上積みを見込み、通期の全社業績予想を上方修正しています。国内の枠を超えたグローバルな事業規模の拡大が同社の特徴です。

■ 決算の「期」や「季節性」による見かけの落とし穴

 住宅会社の決算を読み解くうえでは、単一四半期の業績数値だけで市場需要全体を誤認しない姿勢も求められます。

 例えばサンヨーホームズの第1四半期決算は、売上高が前年同期比39.6%減、営業損益が9億3,700万円の赤字へ転落しました。しかし、これは前年同期にあった分譲マンションの新規竣工・引き渡しが今期は第4四半期に集中するという「物件引き渡しの季節性」による構造的な影響です。一方、先行指標の一つとなる住宅事業の受注高は前年同期比69.6%増の74億9,200万円と大幅に伸びています。四半期の損益だけでは、受注を含めた足元の事業動向を十分に捉えられない例と言えます。

■ 「新築市場」の動向を超えた事業構造の競い合い

 今回取り上げた各社の決算からは、戸建分譲、注文住宅、賃貸住宅、賃貸管理、リフォーム、マンション・都市開発、収益不動産、物流・データセンター、海外住宅など、住宅関連企業の収益源がいかに多様化しているかが示されました。

 もはや「新築住宅の着工件数が増えればすべての住宅会社が潤う」という単純な市場構造ではありません。市場環境の変化に対し、新築以外の収益源をどう組み合わせ、どの領域に経営資源を最適配分しているか。住宅市場の先行きを占ううえでは、着工データや金利、建築コストなどの外部環境に加え、各社が「どこで、どう稼ぐのか」という事業構造の違いを注視することが重要となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)

※各社で決算期および決算対象期間が異なるため、増減率は各社の前年同期との比較。