今回のニュースのポイント
不動産大手6社の最新決算では、三菱地所が営業利益前年同期比94.3%増となった一方、三井不動産や野村不動産HDは大幅減益となるなど業績に濃淡が出ました。ただ、減益企業でもオフィス賃貸や管理事業は底堅く推移しています。物件の売却・引き渡し時期による四半期業績の振れと、賃貸など継続収益の強さが浮き彫りとなっています。
■ 不動産大手6社、利益の方向性は大きく分かれる
国内不動産大手6社(三菱地所、三井不動産、住友不動産、東急不動産HD、東京建物、野村不動産HD)の最新決算が出そろいました。大幅な増収増益を達成した企業がある一方、前年同期の高水準の反動で大幅減益となった企業もあり、表面上の業績数字は大きく分かれる結果となりました。
三菱地所(2027年3月期1Q)は営業収益4,976億8,500万円(前年同期比39.4%増)、営業利益1,212億4,000万円(同94.3%増)と急伸しました。東京建物(2026年12月期中間)も営業利益398億5,200万円(同17.1%増)、東急不動産HD(1Q)は営業利益465億9,300万円(同12.7%増)、住友不動産(1Q)は営業利益1,028億4,600万円(同1.0%増)とそれぞれ増益を確保しました。
一方、三井不動産(1Q)は売上高6,169億円(同23.1%減)、営業利益1,035億円(同35.4%減)、野村不動産HD(1Q)は売上高1,910億6,400万円(同13.7%減)、営業利益255億4,000万円(同30.6%減)と大幅な減収減益となりました。(※東京建物のみ中間決算、他5社は1Q決算。四半期ごとの物件計上時期により変動が大きいため前年同期比と事業動向を分析)
一見すると明暗が分かれたように映りますが、不動産会社は大型物件の売却やマンション引き渡しが特定の四半期に集中することで業績が大きく揺れ動く特性を持ちます。表面上の増減率だけで単純な優劣を判断することはできません。
■ 三菱地所:営業利益94%増、海外事業が急拡大
6社の中で最も際立った伸びを見せたのが三菱地所です。第1四半期の営業利益は前年同期比94.3%増の1,212億4,000万円、純利益は同198.3%増の954億1,600万円(投資有価証券売却益の計上も寄与)となりました。
業績急拡大の牽引役となったのが海外事業です。海外事業の営業収益は前年同期の303億8,300万円から1,192億1,400万円へ、セグメント営業利益も63億7,300万円から430億3,600万円へと飛躍的に拡大しました。
あわせて、基盤となる丸の内事業(営業利益272億4,000万円・前年同期比10.6%増)やコマーシャル不動産事業、住宅事業も順調に増益を確保しており、海外での大きな成果に国内基盤の堅調さが組み合わさる形で利益を押し上げました。
■ 三井・野村は大幅減益 前年の物件計上の反動が影響
対照的に大幅な減益となったのが三井不動産と野村不動産HDです。
三井不動産は営業利益が前年同期比35.4%減の1,035億円となりましたが、主因は分譲事業の利益が前年同期の978億円から315億円へ縮小したことにあります。前年同期に大型分譲マンションの集中的な引き渡しや固定資産売却益が計上されていた反動が出た格好です。
野村不動産HDも営業利益が同30.6%減の255億4,000万円となりましたが、これも住宅や都市開発セグメントにおいて前年同期に高水準だった物件引き渡し・売却の反動期(端境期)にあたったことが影響しています。両社の大幅減益には、前年同期の物件引き渡しや売却などの反動が大きく影響しており、単純に不動産需要の悪化を示すものとは言えません。
■ オフィス賃貸は堅調:住友不動産は1Q最高益を更新
開発物件の計上時期に左右されない「ストック型収益」においては、業界共通の底堅さが確認できます。
住友不動産は売上高こそ前年同期比4.2%減となったものの、営業利益は1.0%増の1,028億4,600万円となり、主要利益で第1四半期として過去最高益を塗り替えました。東京都心部を中心とするオフィス賃貸事業の営業利益が9.8%増の581億2,800万円と好調で、既存オフィスの空室率も前期末の4.3%から3.6%へと大きく改善しています。
全社で減益となった三井不動産においても、賃貸事業の営業利益は前年同期の460億円から547億円へと拡大しており、オフィスなどの賃貸事業は堅調に推移しました。
■ 東急・東京建物も増益:ホテル運営やビル売却が寄与
東急不動産HDと東京建物も、それぞれの強みを発揮して増益を確保しました。
東急不動産HDは、ホテルやリゾート、マンション管理などを手掛ける管理運営事業の利益が大きく改善(163億4,500万円、前年同期は44億6,000万円)し、営業利益は前年同期比12.7%増となりました。
東京建物は、ビル賃貸の底堅さに加え、投資家向け物件売却が急拡大したビル事業が大幅な増益(122.7%増)を達成し、中間期の営業利益は同17.1%増を記録。好調な進捗を受けて通期の営業利益予想を従来の1,000億円から1,055億円へ、年間配当予想も105円から126円へ上方修正しました。
■ 「売る利益」と「持つ利益」:大手6社決算の構造
今回の6社決算を横串で見ると、不動産ビジネスにおける2つの収益構造がより鮮明になります。
・売る利益(フロー型): 物件開発・マンション分譲・物件売却。大型案件の計上時期によって四半期業績を大きく揺ら動かす要因となる。
・持つ利益(ストック型): オフィス賃貸・商業施設運営・マンション管理。物件売却などと比べて四半期ごとの計上時期による振れが小さく、継続的な収益基盤となる。
三井不動産や野村不動産HDの減益は「売る利益」の計上時期による振れであり、住友不動産や三井不動産の賃貸、東急不動産HDの管理運営に見られるように「持つ利益」は底堅く推移しています。表面上の前年同期比だけで企業の優劣を測るのではなく、どちらの利益が変動しているかを見極めることが重要です。
■ 通期計画はおおむね維持 今後の焦点
通期業績予想については、業績を上方修正した東京建物以外の5社(三菱地所、三井不動産、住友不動産、東急不動産HD、野村不動産HD)が従来の計画を据え置きました。
オフィス需要の底堅さは続いているものの、建築コストの高止まりや将来的な金利動向、分譲住宅の販売ペースや開発物件の売却進捗など、業界を取り巻く環境には不確定要素も存在します。単四半期の増減にとらわれず、安定した継続収益の確保と開発物件の順調な収益化をいかに組み合わせて年間目標を達成できるかが、今後の注目点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部)













