今回のニュースのポイント
厚生労働省は30日の厚生科学審議会感染症部会で、ワクチン、治療薬、診断薬などの「感染症危機対応医薬品等(MCM)」について、研究開発から生産、供給までを平時から維持するための支援・法制度の検討を始めました。感染症分野では平時の需要や収益性を予見しにくく、民間投資だけでは必要な研究開発や生産能力の確保が困難という構造的課題に対し、企業の事業予見性を高めるため、国による複数年度の計画的な取り組みを含む制度的枠組みの構築を議論します。
本文
厚生労働省は30日、次の感染症危機に備え、ワクチンや治療薬、診断薬などの「感染症危機対応医薬品等(MCM)」について、国内での研究開発・生産・供給体制を平時から維持するための制度設計に向けた検討を開始しました。企業の事業予見性を高める観点から、国による複数年度の計画的な取り組みを含む支援のあり方や、持続可能な生産基盤を確保するための法制度などの議論に着手しました。
厚労省は新型コロナウイルス感染症への対応を通じ、感染症有事にはMCMへの需要が短期間で急増する一方、平時は市場規模や収益性を予見することが難しく、民間企業の投資だけでは十分な研究開発や生産能力の確保が困難になるという市場メカニズム上の構造的課題を整理しています。また、原材料や製品の海外依存により、有事に供給が途絶するリスクが顕在化したことも踏まえ、健康医療安全保障の観点から、平時から研究開発や製造などの基盤を維持する必要性が指摘されています。
今回の検討では、研究開発基盤にとどまらず、治験・臨床試験体制、迅速な薬事承認の仕組み、持続可能な生産基盤・供給体制、さらには備蓄を含めたMCMの包括的な確保策を論点に掲げています。特に感染症有事には各国が自国向けの供給を優先し、国際市場やサプライチェーンが十分に機能しないおそれがあることから、原材料を含む自立的な供給確保と国内生産能力の維持に向けた具体的な対応策を探ります。
制度面においては、研究開発、生産、供給に対する国の支援について、複数年度にわたる計画的な取り組みと企業の事業予見性の確保を踏まえ、どのような制度的枠組みが必要かを検討します。あわせて、国、研究機関、医療機関、民間企業の役割分担や官民連携のあり方についても整理を進めます。
今回の議論は、2026年3月24日に閣議決定された「MCM戦略」に基づくものです。同戦略では、感染症分野において企業が事業予見性を持ちにくく、分野からの撤退事例も確認されていると指摘されており、企業が持続的に研究開発や製造を行える環境整備が求められています。支援策としては、研究開発費を直接助成する「プッシュ型」の拡充に加え、政府による買い上げや備蓄など、実用化後に製造環境等を継続維持する「プル型」支援の導入・充実も検討課題として掲げられています。
過去の支援実績として、新型コロナ対応では国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が1,515億円を超える研究開発支援を行い、4件のワクチン、23件の医療用検査薬、2件の医療機器の承認につながりました。一方で、感染症分野は流行の規模や時期の予測が難しく、平時においても製造設備や専門人材を維持し続ける必要があるため、有事のみならず平時から生産・研究体制を維持できる持続可能な仕組みを構築できるかが焦点となります。
厚労省は9月30日の議論をキックオフとし、10月から11月にかけて月1回程度、関係部会とも連携しながら具体的な論点を審議し、今冬ごろに取りまとめを行う予定です。感染症有事に必要な医薬品を国内で確実に確保するため、需要の少ない平時においても企業が研究開発や生産能力を維持・強化できる実効性のある制度を構築できるかが今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













