海運の「強靱性」どう確保 日米など、造船・人材・港湾含む供給網を議論

2026年10月03日 10:10

タンカー船イメージ

海運の強靱性を巡り、日本は航路や船舶、燃料供給、人材の多様化と、関係国との相互補完的なネットワーク構築の重要性を指摘。造船や港湾などを含めた海事能力について議論された(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

国土交通省は10月2日、9月21〜23日に米ワシントンで開催された海運先進国当局間会議(CSG)などの結果を公表しました。18カ国が参加するCSGでは、紅海やホルムズ海峡など重要海上交通路の混乱を踏まえ、国際海運の強靱性について議論を行いました。日本からは、海運の強靱性を高めるには一国のみで全ての能力を持つのではなく、航路、船舶、燃料、人材などを多様化し、信頼できる国との相互補完的なネットワークを構築することが重要であると表明。また、米連邦海事局(MARAD)からは、米国の海事・造船能力を国家安全保障・経済安全保障上の重要な基盤と位置付け、造船所、米国籍商船隊、海事人材など海事サプライチェーンを一体的に強化する考えが示されました。

本文
 世界の物流を支える海運。地政学的な緊張が高まるなか、海運の安全や強靱性を維持するために考えるべき対象は、単に「船の数を確保する」ことだけではありません。

 今回の会合では、航路や燃料供給、人材の多様化に加え、造船、港湾、保険などを含めて海事能力を総合的に捉える考え方が議論されました。こうした海事システム全体をいかに維持し、サプライチェーンの混乱に備えるかについての意見交換が、国際的な会議の場で交わされています。

 国土交通省が発表した「海運先進国当局間会議(CSG)」などの結果概要によると、今回の会議では紅海やホルムズ海峡といった重要海上交通路における混乱や、一部の国・地域による通商措置や制裁、産業政策などが国際海運やサプライチェーンに与える影響について話し合われました。また、重要海上交通路を安全かつ利用可能な状態に維持するための国際協力についても議論が行われました。

 海上輸送の強靱性について、日本側は「一国のみで全ての能力を保有することや、外国船舶を排除することではない」との考えを提示。航路や保有船舶、燃料供給、人材などを多様化させ、信頼できる関係国との間で相互に補完し合えるネットワークを構築することが、強靱性を高める鍵になる旨を発言しました。

 一方、米連邦海事局(MARAD)からは、米国の海事・造船能力を国家安全保障・経済安全保障上の重要な基盤と位置付ける考えが説明されました。造船所や米国籍商船隊、海事人材など海事サプライチェーンを一体的に強化する考えが説明され、商業的に持続可能な海事産業を形成するためには、船舶建造への支援にとどまらず、貨物需要、人材、インフラ、関連産業を含む「海事システム全体」の構築が必要であるという認識が示されています。

 会合では次世代船舶や技術への取り組みについても話し合われました。MARADからは原子力を含む将来の船舶推進エネルギーの構想や、AI・デジタル技術を活用した海事産業の高度化、次世代船に対応した造船所や船員教育などについて説明がありました。ただし、これら次世代船舶の実用化に向けては、技術開発のみならず安全基準の策定、船員訓練、寄港国の受け入れ体制、荷主の理解、国際ルール形成が必要であるとの見方も示されています。

 このほか、現在停止中の米国通商法301条に基づく入港料措置などの海事政策を巡り、日本側からは、新たな措置を導入する際には国際海運や関係国、既存投資、米国の輸出入への影響を考慮し、透明性と予見可能性を確保することが重要であると発言しました。

 地政学的リスクが高まる中、今回の会合では、船舶だけでなく、人材や造船、燃料供給、港湾などを含め、海上輸送を支える基盤をどう強靱化するかが議論されました。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)