不況と震災による各企業立て直しのなか、ファブレス方式に注力

2011年06月06日 11:00

 ニュースなどでファブレス企業という言葉を耳にすることがある。これは自社工場を持たない会社のことを指し、製造をすべてアウトソーシングするビジネスモデルのことをいう。具体的には、製品の企画などは自社で開発し、社外の工場へ生産を委託、製品はOEM供給を受ける形で調達するという形態をさす。

 元々、ファブレス方式は1980年代半ば、アメリカのシリコンバレーで誕生した経営手法といわれている。最大のメリットとしては、投資額が抑えられ、リスクを最小限にすることが挙げられる。実際、工場を新設するには何百億もの初期投資が必要となり、それを回収するのは短期間では難しいだろう。初期投資額が抑えられる以外にも、アイデアやビジョンを少ない資本でビジネスとして実現でき、費用面でも固定費が変動費になることで、損益分岐点を下げるという利点もあるという。

 日本でもこのファブレス形態で事業を行う企業も多く、業種もコンピュータ系から玩具、食品まで多岐に渡っているようだ。代表的なファブレス企業としては、任天堂ややおきん、船井電機などがあげられる。飲料メーカーであるダイドードリンコもファブレス企業の1つで、自販機・製品の製造・物流を外部の企業と協働している。自社内での徹底した品質チェックはもちろんのこと、各協力工場においても厳しい品質管理を行うというダブルのチェック体制には自信を持っているという。安全・安心が問題となっている現在、この2重の管理体制は、ファブレス企業ならではの強みといえるだろう。

 さらに同社は売上の約90%以上が自動販売機であることから、ファブレス方式により、企画・開発や地域に密着した自販機網の拡充に資金やマンパワーを集中させたことで、同業他社にはない自動販売機や商品を次々開発。1975年の創業以来、質の高い自販機オペレーション体制を構築し、企業としての独自の個性を生み出し、強固な財務体制の中、安定した経営を行っている。

 日本を襲った未曽有の災害はサプライチェーンや自社工場での製造に大きな影響を及ぼした。各社が立て直しを図り、リスク分散の意識が高まる中、 製造をアウトソーシングするファブレス方式というビジネスモデルに注目が集まるかもしれない。