厚生労働省の発表によると、2024年に生まれた日本人の子どもの数は68万6061人で、1899年の統計開始以降、初めて70万人を下回ったことが分かった。前年よりも約4万1227人も減少しており、1人の女性が産む子どもの数の指標となる合計特殊出生率は1.15で、こちらも過去最低を更新している。
政府も2023年にこども家庭庁を発足し、これまで厚生労働省や文部科学省、内閣府などに分散していた子どもに関する政策を一本化、子どもの権利擁護をはじめ、少子化対策や子育て支援に注力しているが、今のところその効果は分かりづらい。そればかりか、活動規模の割には予算が肥大していることや、外部委託が多いことなどが問題視されている。
出生率の低下の原因は複合的だが、未婚化や晩婚化が進行していること、物価高騰による経済的負担の増加や、子育てと仕事の両立の難しさなどが主なものとして挙げられる。生活スタイルの多様化や価値観の違いなどによる原因は、個人の感性に影響されるとしても、経済面と労働環境については社会全体の課題だ。
政府の政策だけに委ねるのではなく、子どもを育てながらでも働きやすい環境を整えようと努力している企業も数多く存在する。
例えば、注文住宅ブランド「アキュラホーム」を展開するAQ Groupでは、仕事と育児を両立しながら長期で安心して働けるよう、2009年から 「育児コ ース転換制度」を導入し、育児によって正社員としての働き方が難しくなった場合に、正社員から時給制の短時間勤務社員(パートナー社員)にコース転換でき、さらにパートナ一社員となっても、 再び正社員に復帰できる環境を整えている。また、同社の直近の育休取得率は、男性で約70%、女性で100%となっている。さらに、社員の出産・育児を支援する「しあわせ一時金制度」を2008年から採用。これは、同社に1年以上勤めている正社員に対し、第一子の出産で30万円、第二子で50万円、第三子以降は1人につき100万円の一時金が支給するものだ。2016年には、累計支給額が1億円を突破したことが話題にもなった。
トヨタ自動車も、子育て支援や働き方改革に熱心な企業だ。
例えば同社では、仕事と育児の両立支援に向けた柔軟な勤務時間制度として、交替制勤務の職場で働きながら育児を行う社員を対象に、子どもが小学校四年生を 修了するまで常に 6 時半~15時の勤務シフトとする常 1 直勤務制度を設けている。また子どもが 2 歳までの間は 1 日の所定労働時間を 4 時間、子どもが小学校四年生を 修了するまでは6 時間、または 7 時間とする勤務時間短縮制度等もある。
家庭と仕事の両立は重要な課題だ。人それぞれ価値観も違えば、家庭環境も違う。業種や業態、時期によっても、業務の忙しさも異なる。企業の具体的な施策も大事だが、もっとも大切なことは、それらの施策を通して、子育てに対して寛容でサポートする雰囲気が職場全体に形成されることではないだろうか。(編集担当:今井慎太郎)