実質GDP成長率が2009年に4.4%、2010年が5.3%、2011年は5.5%と着実に成長を続けているミャンマー。貿易収支は10年連続で黒字を続け、現政権に代わって以降は欧米諸国との関係も好転。6200万人の人口を抱える上に内需の拡大も期待され、東南アジア諸国の中でも最も注目されている国の一つであろう。
日本と関係も徐々に緊密化しており、日本企業の進出も活発化。先日もユニ・チャーム<8113>が、同国において女性用生理用品及び幼児用紙おむつの分野で認知度の高いブランドを展開し、広範な地域に製品を展開する同国有数の衛生用品製造・販売しているMYCAREを買収。1898年にヤンゴン・日本航路を開設以来100年以上に亘る長い歴史を同国との間に有している商船三井 も、同社100%出資の現地法人を設立するなど、現地での展開を本格化させている。さらにミャンマーは、世界三大仏教遺跡にも数えられている「バガン遺跡」や、独自の文化を持った少数民族の生活に触れることができる「インレー湖」などの豊富な観光資源を有している。そのためクラブツーリズムが、通常ではミャンマーへの直行便がない日本航空便を直行便として特別チャーターしたツアーを発売する等、企業の進出だけでなく観光客の訪問も徐々に活発化している。
民主化が進み政治が安定化、経済発展も順調であり、観光誘致も着実に進んでいるミャンマーであるが、難点とすれば、治安に不安があることであろう。90%が仏教に帰依するミャンマーであるが、少数派のイスラム教徒との間には緊張が走っており、バゴー地域オウポー地区及びミンフラ地区では住民間の衝突によりモスク、商店、民家が襲撃による被害を受け、25日夜には同地域ジョビンガウッ地区において同様の事態が発生している。これを受けて同地区では夜間外出禁止令が出されている程である。同地区は、中心都市であるヤンゴンの北約100~150kmに位置しており、ヤンゴン地域及びヤンゴン中心部においては現在のところ暴動・デモ等に関する具体的な情報はないというが、少なからず死者も出ており、過激派仏教徒によるイスラム教徒への圧力が増している。さらに、カチン州南東部の一部地域では、2011年6月からミャンマー国軍とカチン独立軍との間で散発的に衝突が発生しており、また、2012年年末から2013年年始にかけてミャンマー国軍がカチン州ライザーにあるKIA本部周辺に対して航空機による攻撃を実施。カチン州では主に南部を中心に爆破事件等が散発しているなど、注目を集める東南アジア諸国の中では治安の不安定さでは群を抜いていると言えるであろう。
外国企業の参入が禁止される分野が漸く明確化され、ミャンマーにも外資を受け入れる体制が整いつつある。そこで、その経済成長や潜在市場の魅力を積極的にアピールすることは必要である。しかしそれと同時に、デメリットやリスクも十分にアナウンスする必要があるであろう。現状のアナウンスでは、あまりにもそれが不足しているのではないだろうか。(編集担当:井畑学)