2012年10月23、24日にヤマハ発動機本社(静岡県磐田市)のヤマハ・コミュニケーション・プラザで開かれた「ヤマハ・ワールド・テクニシャン・グランプリ2012」は、各国のトップメカニックによる世界大会。
自転車を除く二輪車の市場規模は、直近で最も勢いのある年度で4兆円に迫る勢いがあった。2010年の調べでも2兆円超える規模を維持している。メーカーごとのシェアでは、ホンダが1位、ヤマハが2位で、市場のおよそ4割はトップ2社に、スズキ、カワサキを加えたジャパンブランドで占めている。
総人口が約1億2000万人の日本における二輪車の市場はけっして大きくない。日本メーカーの活躍の場は圧倒的に海外で、欧米の先進国だけでなく、というよりもむしろ最近は新興国や途上国での躍進が目覚ましい。そしてシェアの拡大にも大きく貢献している。
それではなぜ日本メーカーのモーターサイクルが海外で売れるのか。「性能」「故障が少ない」「日本車の好イメージ」「先進性」などとともに、「修理の対応力」や「部品供給の早さ」が理由に上がることも多い。つまり故障に際しての万全のサービス体制がリピーターを含めた顧客獲得につながっているようだ。
たとえば年間800万台規模のモーターサイクルを世界で製造している業界2位のヤマハ発動機は、主だった国には必ず大きな代理店を置き、アフターヤマハ整備士が世界で約5万人在籍している。
そのうち経験や実績、技術力と顧客対応などの厳しい審査を受けたYTA(ヤマハ・テクニカル・アカデミー)のゴールド/シルバー/ブロンズの有資格者が合計で約3万人。彼らのようなヤマハ整備士の存在は、世界のどこでもYTA基準を満たした充実した整備やサービスを受けられることを意味している。さらに彼らが指導者として新しいヤマハ整備士たちを指導育成しているから、どこの国でも同じようにヤマハのモーターサイクルは、サービス面からも高いクォリティや信頼性が保たれている。
こうしたヤマハ整備士が研鑽を積む場として国単位で開かれているのが「ヤマハ・テクニシャン・グランプリ」という大会だ。メカニックたちがヤマハのモーターサイクルを正確で迅速に点検整備できるか、またあえて故障させた車両から決められた時間内で故障個所を特定しエンジンがかかる状態にできるか、そしてサービスを受けにきた客に適切な接客ができるかで競われる。去る2012年10月23、24日にヤマハ発動機本社(静岡県磐田市)のヤマハ・コミュニケーション・プラザで開かれた「ヤマハ・ワールド・テクニシャン・グランプリ2012」は、各国のトップメカニックによる世界大会。リーマンショックによる世界大不況の影響で2007年以来となったが、今回が5回目となる世界大会には、過去最大の20か国から28名の精鋭が集結。初日の筆記試験に続いて二日目には実技で競い合った。
全「競技」終了後に開かれた閉会式では、株式会社ヤマハの協力で金管楽器による生のファンファーレが鳴り響く中、スポーツモデルクラス、コミューターモデルクラスの2クラスそれぞれ上位3位(3位は2名ずつ)までの「選手」が表彰台に呼び上げられた。YMG(ヤマハ・モーター・ドイツ)から参加してスポーツモデルクラス優勝のトルステン・ブランドさんは、「今回の優勝のことは、さっそく帰って街の新聞で伝えてもらうつもりです。モーターサイクルが好きな人なら、このトロフィーがどれだけ価値あるものか、すでに知っているからね」と語り、一方コミュータークラスで優勝したYMVN(ヤマハ・モーター・ベトナム)から参加のレ・トゥン・ウィ・トゥさんは、「日々の仕事とグランプリの準備の両立は簡単じゃなかった。でも、こんなハイレベルな大会で優勝できてハッピー。店のお客さんと奥さんに早く結果を知らせたいよ。いちばん喜んでくれるのは、お店のお得意さんたちだと思います」そういってひときわ大きな優勝トロフィーを撫でてみせた。
ちなみに二輪車を含む日本のほとんどの自動車メーカーで、今回のヤマハ・テクニシャン・ブランプリのような販売店メカニックのためのコンクールを国内ディーラーのサービスマンを対象に開催している。しかし、各国のサービススタッフから精鋭を募り、世界大会を定期的に開催しているのはヤマハ発動機のほかには見当たらない。一方、こうした活動に早くから取組んでいる輸入車のアウディとフォルクスワーゲンでは、それぞれ国内大会の上位者をドイツで開かれる世界大会に派遣している。