昨年、東日本大震災の影響による大きく落ち込んだ国内の新車販売台数(軽自動車を含む)。2012年は復興需要やエコカー補助金の復活などで急激な回復を期待されたが、下半期に入ると徐々に減少傾向を見せ、9月以降はエコカー減税終了などの材料も重なって、ついに昨年の水準を下回ってしまった。
そんな状況の中でも、勢いが衰えないのが軽自動車だ。日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会がまとめた、11月の車名別新車販売台数に関する報告書によると、上位10位圏内に軽自動車が6台もランクインしている。普通乗用車の新車販売台数が落ち込む中でも、軽自動車は昨年を上回る水準を維持し続けている。
そんな、軽自動車の躍進を牽引しているのがホンダの「Nシリーズ」だ。昨年12月に発売したシリーズ第1弾の「N BOX」は、幅広い層から支持され、2012年4月から5ヵ月連続で軽四輪車新車販売台数第1位となり、発売以来の累計販売台数は16万台を超える大ヒットとなった。7月にはシリーズ第2弾として「N BOXプラス」、先月にはシリーズ第3弾の「N ONE」を立て続けに市場に投入し、同社の普通乗用車部門での落ち込みをカバーしている。
そして、今月の10日には富士重工業が、ガソリン車トップレベルの低燃費を実現した新型軽乗用車「スバル プレオ プラス」を発表。エンジンを自動停止する停車前アイドリングストップや 減速時の走行車両の運動エネルギーをオルタネーターが電気エネルギーに変換してバッテリーに回生するエコ発電充電制御などを採用することで環境性能を高め、さらに、ボディ骨格の合理化、内装パーツの軽量化を行うことで、ガソリン車トップレベルの低燃費30.0km/L(JC08 モード燃費値)を実現したという。同社としては、ホンダの「Nシリーズ」の独走は許すまいと、ダイハツ工業よりOEM 供給を受け、79.5 万円(消費税込)という価格設定で勝負し、軽自動車分野における存在感を高めていきたいところだろう。
「デフレ」「高齢化」「核家族化」など、いまの日本社会に対してフィットする移動手段が軽自動車であるのかもしれない。国内最大手のトヨタ自動車でさえも、昨年よりこちらもダイハツ工業からOEM供給を受け、国内軽自動車市場に参入していることから考えると、国内自動車メーカーにとって軽自動車戦力は、もはや目を背けることのできない重要な課題となっているようだ。
日本中がバブル経済に浮かれていた1980年代。街には、まるで競い合っているかのように高級車が溢れていた。あれから20数年が経ち、長引く景気の低迷、環境問題の深刻化、デフレ、さらには若者の車離れなど、日本社会を取り巻く環境は一変した。そんな時代に再評価されているのが、コンパクトで経済的な軽自動車。車というは、単なる移動手段だけではなく、ある意味その時代の世相を映し出してくれる存在のようにも思えてくる。