来年度予算の概算要求が各省庁で出揃った。このうち、農家の戸別所得補償制度の創設で関心を集 める農林水産省の要求額は同制度構築のためのモデル事業費や水田利活用自給力向上事業など同制度関連事業費を含め、同省全体として2兆4701億円となり、前年度当初予算に比べ1534億円減、率にして6%削減した。
鳩山政権はマニフェストで国民と約束したものを除き、既存の政策は精査し、既存予算をゼロベースで見直すことを予算編成の前提としてきた。農水省もこの方針に従って、公共事業費は8459億3700万円と対前年度当初比で15%削減。公共事業費以外の一般事業費(6822億円)でも同2.5%削減した。新規で増えたのは農家の戸別所得補償制度に関する費用と農村漁村の6次産業化推進のための費用のみにとどまった。
このうち、農家の戸別所得補償制度については、2011年度からの実施に向け、制度設計を急いでいる。農水省では、来年度に全国規模のモデル事業として「米の生産数量目標に沿って生産を実施する米販売農家に対しては、販売価格が生産に要した費用を下回った場合、その差額を直接支払いで、農家に補償する」。このモデル事業費用として3447億円を計上した。この制度の対象農家をどの程度までの規模の農家にするのか、農業統計で販売農家とされている耕作規模3反(30アール)以上、生産額50万円以上などの基準を適用するのか、別途の基準を定めるのか、また、生産に要する費用をどのように算定するのかなど、詳細な点について「11月中をめどに」基準を設定したい意向だ。また、生産コストは地域によって差が生じるが、「来年度のモデル事業については地域差を考えないで実施したい」としている。
また、水田を有効に活用するため、麦や大豆、米粉、飼料用米などを生産し、販売する農家に対しては主食用米なみの所得を確保する戸別所得補償制度関連事業を実施するとしており、これに2171億円を計上した。麦や大豆の生産を行った場合、10アールあたり3万5000円を、米粉や飼料用米の生産については10アールあたり8万円を予定している。
このほか、野菜価格安定対策事業に100億円、農業者の資金繰り支援のための運転資金について、無担保無保証人の1000億円特別保証枠などの設定(農業信用補完強化事業交付金)費用として14億円、農業法人などが就農希望者を雇用して行う実践研修を支援するための費用として36億円などが入っている。
(編集担当:福角忠夫)