「原子力規制庁は力の入れるところを間違っている。再稼動より汚染水対策だ」と共産党の吉良よし子参議院議員らが怒っている。規制庁が電力会社から技術者を募集しようと一般社団法人が発行母体の電気・エネルギー業界紙に実務経験者の募集を掲載。原発再稼動の審査をスピードアップさせることが主眼ではないかというもの。
業界紙に掲載した求人フレーズは「原発などで施設の運転、設計、保全で培った経験を規制行政分野で活かしてみませんか」というもの。10月1日採用予定になっている。
規制庁のホームページでも実務経験者・任期つき職員など採用情報の欄で「規制行政の充実・強化を図るため」として掲載しているが、最初にあげているのが「規制基準への適合性審査(耐震審査を含む)」だった。今回採用は20人予定で、主な職種は規制基準への適合性審査業務や原子力施設のあるところに常駐する保安検査官としている。
原発を規制する職員が従前に勤務していた電力会社の原発規制基準審査にまったく無感情で粛々と審査できるのか、使命感が問われる一方で、電力会社職員以上に知識と経験が必要な職種だけに、基礎となる経験や知識を有する人材の確保が難しいことも確かなよう。規制庁には厳格・慎重な採用が問われそうだ。
また、東京電力福島第一原発事故で放射性物質に汚染された地下水の海への流出が続く中、汚染水対策の検討会合が10日に1回のペースなのに、新規制安全基準の審査会合は週3回のペースで開かれるなど再稼動審査の迅速化に意識が向いているのではとの懸念の声もある。規制庁は唯一、国民から原発の安全基準を担保されている機関であることを最重視した発足の原点に立った対応を常に忘れるべきでないだろう。安全審査に時間を意識しないことが求められている。また海洋汚染の深刻な事態の収拾を最優先すべきとの声もある。(編集担当:森高龍二)