内閣府が発表している「平成25年版 高齢社会白書(全体版)」によると、我が国の総人口は、2012年10月1日現在で1億2,752万人。その内、65歳以上の高齢者人口は、過去最高の3,079万人となり11年度の2,975万人を100万人以上も上回った。それに伴い、総人口に占める高齢者の割合も24.1パーセントとなった。つまり、日本国民の4人に1人が高齢者ということになる。しかし、ひと口に高齢者といっても、70を過ぎても若々しい人はいくらでもいるし、逆に60手前でも老けて見える人もいる。加齢の度合いは単純に年齢だけでは測れない。
加齢の程度を年齢や見た目などではなく科学的に推定する方法として、最も優れた分子生物学的指標の1つといわれているのが、染色体の末端に存在する特殊なDNA塩基配列構造「テロメア」の長さを測定する方法だ。テロメアの機能は染色体末端を保護することでその細胞の生存性を保つことにある。しかし、細胞分裂の度に短かくなり、最終的に染色体の保護ができなくなる長さにまで短縮すると、細胞はそれ以上分裂できなくなってしまう。つまり、テロメアの長さを測定することで、その生物のその時点での加齢の程度を推定することができるというわけだ。さらに、テロメアの長さは個人で異なるうえ、各細胞内の染色体ごとに異なる。
このテロメアの長さを細胞核内の個々のテロメア毎に測定する世界で唯一の「テロメア解析テクノロジー(Telomere Analysis Technology (R); TAT )」は、スペインのマドリッドに本社を置くライフ・レングス社が保有している。同社の技術では、テロメア長中央値のみならず、細胞老化や生物学的年齢の測定により重要な指標とされる短テロメアの割合、全てのテロメア長の頻度分布のデータまで提供することが可能だという。そしてこの度、その技術が日本にも上陸することになりそうだ。
ミツバチ産品で知られる株式会社山田養蜂場は2014年2月6日、ライフ・レングス社に300万ユーロの出資を行い、日本国内でテロメア長測定サービス事業を行う合弁会社を設立する契約に合意した。同社はこれまで「予防医学」の考え方に基づき、ミツバチ産品をはじめ天然素材にこだわった健康食品や化粧品、食品などを製造、販売してきた。また2006年には「みつばち健康科学研究所」を設立、さらに08年には「みつばち研究助成基金」を設立し、ミツバチ産品の機能性の追求と予防医学的な研究に取り組む世界中の研究者を支援してきた。今回の出資と合弁会社の設立も、テロメア長測定サービスを国内でスタートさせることで、さらなる「予防医学」の推進を目指すものだ。
老いは誰にでも訪れるが、老いの程度や速度は人それぞれだ。テロメアの研究が進むことで、今よりもさらに、一人ひとりに最適な予防医学や治療などのサービスが提供できるようになるかもしれない。世界でも飛び抜けて超高齢社会を迎えようとしている日本にとって、テロメア解析テクノロジーは今一番必要な技術なのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)