運転中にトンネルに入ると一瞬、内部の様子がわからずドキッとした経験はないだろうか。トンネル構造物などの点検は、交通規制を行った上で高所作業車などを用いて目視や打音、触診などにより実施している。しかし、これでは手間と時間や費用がかかり、迅速な手法の開発が求められていた。これを受け、日常的に巡回時に、トンネル内の状況を撮影するだけで、いち早く異常を発見することができる技術が開発された。
中日本高速道路(NEXCO中日本)株式会社は、安全性向上3カ年計画の取組みの一つとして、トンネル内を高速で走行しながら画像処理により自動的に異常を検出する技術を開発した。
この技術は、東京大学情報理工学研究科創造情報学専攻の石川正俊教授が研究開発している「高速画像処理技術」を用いたもの。高速で移動する物体を常にフレーム中心に捉え続け、高速度カメラによるブレの無い高精度な映像を撮影する技術を活用した。
NEXCO中日本では昨年、100km/hで高速走行しながら、トンネル天井部に設置したジェットファンの固定金具を撮影する試験を行った。この結果、ブレのない鮮明な画像を取得できたという。また、カメラ・レンズ・照明などの機材環境を調整することにより、コストも安く抑えることができる。
このことから、交通規制をせず、通常の走行で、高速道路の構造物などを正確かつ鮮明に画像を取得できるものと結論した。今後は、これらの画像を過去に撮影した画像と比較することにより、変位や変状をリアルタイムに検出するシステムを構築する。まずはトンネル内に設置された金具などの位置ずれやひび割れの進行を自動的に検出するシステムを開発する。
また、トンネル内を高速走行しながら撮影した映像を、過去に撮影した映像と見比べ、金具などの位置ずれ、トンネル内コンクリートのひび割れの進行を自動的に検出するシステムを開発する。同社はこのことで、点検から維持管理までのマネジメント強化を進めていくとしている。点検技術のさらなる信頼性向上と客観性の確保を目指す方針だ。(編集担当:慶尾六郎)