北米トヨタの轍は踏みたくない。米GMのリコール問題拡大

2014年03月25日 09:57

 先日の米司法省発表には、やや驚かされた。北米トヨタ自動車が、2009~2010年の大規模なリコール(回収&無償修理)問題への対応でユーザーに誤解を与える情報を提供したとして、トヨタが12億ドル(約1220億円)もの制裁金を支払うことで和解したというのである。自動車メーカーの制裁金としては過去最大規模だとも。

 司法省によると、「トヨタは同社製自動車の急加速について顧客からの苦情を受けながら、適切な情報開示をせずに消費者や規制当局を欺いた」とされている。検察当局は2010年から4年間にわたり続けてきた調査を踏まえた結果だという。今回の和解でトヨタは12億ドルの支払いと引き替えに、刑事訴追が3年間執行を猶予され、最終的には免除される。

 このニュースを聞いて思ったのは、先月の米GM車の複数の死亡事故の原因となった可能性のある不具合をおよそ10年間放置していた疑惑が浮上している一件だ。既に、米下院エネルギー商業委員会が調査に着手したという。

 問題となっているのは、キーを回してエンジンを始動する点火スイッチ。走行中にスイッチが切れてエンジンが停止し、エアバッグが作動しない不具合で、これによる31件の事故が報告され、計13が死亡している。そのため、今年2月なって、2002~2007年に生産された計162万台のリコールを発表した。

 トヨタは一連のリコール問題で米国内における販売の落ち込みなどを受け、苦情処理体制の見直し、米国内に安全研究センターを設置するなど信頼回復に取り組んできた。また、北米トヨタのトップに初の米国人を据えるなど現地主導の体制整備を進めてきた。

 このトヨタのリコール問題では、米当局の調査でメカニズムの不具合は見つかっていない。つまり、「ユーザーのクレームに対する対処の仕方に問題がある」と裁定された結果の制裁金支払いなのだ。

 しかしながら、今回の米GMの一件は、「不具合があったにも拘わらず、10年間放置した」という疑惑だ。その後の社内調査で点火スイッチ以外に複数の不具合が見つかり、リコール台数は175万台に拡大している。車種は大型セダンからSUV、ピックアップにまで及んでいる。

 GMはリコール問題に関連する費用として3億ドル(約305億円)の特別損失を2014年1~3月期に計上。GMとしては、下院公聴会にトヨタの豊田章男社長が呼び出されたような同じ轍は何としても踏みたくない。バーラ最高経営責任者(CEO)は同社公式ホームページで公開した動画で「欠陥車問題だけでなく、顧客や規制当局、株主への説明・報告が遅れたことにもしっかり対応し、信頼回復に努める」とコメント。果たして、今後どのような展開となることだろう。トヨタ以上の制裁金がGMに課せられるのか、否か?(編集担当:吉田恒)