グローバル化に対応した人材へのニーズに対応すべく、大学による画期的な試みが進んでいる。4月に開学10周年を迎えた秋田県の国際教養大学(AIU)や2011年に設置された沖縄科学技術大学院大学(OIST)では、学内の公用語として英語を採用し、すべての授業が英語で行われている。また教員の半数以上を外国籍が占め、徹底したグローバル教育が話題を呼んでいる。既存の大学でも慶應義塾大学が英語で行われる授業だけで学士号が取れるプログラムとして、環境情報学部に次いで経済学部でも新たなプログラムを立ち上げた。
AIUの特徴はすべての授業が英語で行われることのほか、在学中に最低でも1年間の留学が、卒業のための必須要件となっていることだ。原則として海外提携大学への交換留学の形を取り、学生は留学先の大学で自分の専攻分野のカリキュラムに合致する授業を1年間で30単位履修する。11年現在、海外提携大学は35か国と地域の118校に上る。また外国人教員比率は国内でもトップクラスで11年時点で専任教員の約55%が外国籍という。
AIUは国際教養学部の単科大学だが、科学技術分野ではOISTがグローバリズムに根差した教育に取り組んでいる。OISTでも学内の公用語はすべて英語、また教員と学生の半数以上は外国人が占めている。11年に設置され12年から学生の受け入れを開始して、まだスタートを切ったばかりだが、神経科学、分子・細胞・発生生物学、数学・計算科学、環境・生態学、物理学・化学の5分野において分野の壁を越えた共同研究が推奨されており、関心が集まっている。
新規設置大学うちには、AIUやOISTのように斬新な視点からグローバル人材の育成に取り組む大学が出始めている一方で、既存の老舗大学でも様々な取り組みが展開されている。
慶大では4年間一貫して英語で経済学を学ぶ新たなプログラム「Programme in Economics for Alliances, Research and Leadership(PEARL)」を設置する。経済学の知識を基礎に世界を舞台に活躍する人材の育成を目的として、16年9月に開始する予定だ。
プログラムの特徴は、能力と意思のある学生は5年間で学士号と修士号の双方を授与することなどが挙げられる。同学では、英語で行われる授業だけを履修して学士号が取得できるプログラムとして、11 年秋から環境情報学部の Global Information and Communication Technology and Governance Academic (GIGA) Programを開設しており、今回の経済学部のPEARLは、2つ目のプログラムとなる。
グローバル人材の必要性が叫ばれて久しいが、求められる人材の数はまだまだ足りているとは言い難い。優れたプログラムが作られても、実際にそこから学生が育っていくのには長い時間がかかる。時代に対応できる人材育成への取り組みは、どんなに早く取り組んでも早すぎるということはないのかもしれない。(編集担当:横井楓)