サッカー・ワールドカップが始まった。サッカー王国ブラジルで熱戦が繰り広げられている。ブラジルには各地にクラブチームがある。州単位では州選手権、そして全国単位では全国選手権というリーグ戦から構成される。州選手権、日本で言うと、都道府県ごとにリーグがある。州の広さを考えると妥当ではあるものの、クラブチームが都道府県単位でリーグ戦を行う・・・ということを想像してみると驚きである。ブラジルのサッカーの定着度を表すこの数値、まさにサッカー王国である。日本はどうか。Jリーグチームは、J1からJ3まで52(J1は18、J2は22、J3は12)クラブ。大企業を大手スポンサーに持つクラブから、様々なスポンサーからなるクラブ、企業や地域・市民が共同になって出資するクラブなど、その資本形態はさまざまである。地域のサポートがないと、経営は厳しいのが現実だ。
そうした中、長野県松本市に本拠地を置くJ2リーグ・松本山雅に関して昨年から騒ぎが起きている。松本山雅。J2リーグ所属であるこのクラブに対して出資をしている松本市を巡って昨年10月にある市民グループが検察庁に告発状を提出した。その活動を主導した弁護士は県庁で会見を開き、松本市が2000万円を運営母体である株式会社松本山雅に出資したのは、一営利企業への支援であって、市財政に損害を与えたことを主張。市長と副市長を背任罪で告発した。その後今年2月に松本市に対して住民監査請求が提出・受理され、4月に監査結果が通知された。
松本山雅はJ1レベルの集客力を誇るクラブである、多くのメディアでも地域密着の活動は取り上げられていて、その成功例ともみなされている。住民監査請求では、練習拠点となる同社専用・優先のサッカー練習場2面の建設関連費用合計23億円の松本市の公金支出の中止、告発した際の2000万円の返還を市長に勧告している。
この問題をどう考えるか。一部の人の特異な活動とみるか、何らかの政治対立とみるか。問題は複雑だ。実際、サッカーが地域活性化に役立っていることは事実であろう。町の誇りであり、住民のモチベーションとなっていることは多くの人が同意するはずだ。地域の活性化、地域の人々を元気づける、一体化することに公金を支出するという政策は市民が選出した市長がとった行為でもある。しかし、サッカーに興味もない人にとって見れば「なぜサッカーだけ」となるだろう。サッカーだけが優遇されている感は否定できない。この騒動を大げさだと思ったのは私だけではないだろうが、こうしたことが議会や様々な場面で徹底的に納得が行くまで議論・対話されてきたのかという疑念も残る。(編集担当:久保田雄城)