13種類のがんを1回の採血で診断 NEDO、NCC、東レの産学官連携プロジェクトが始動

2014年08月21日 07:43

 がんの早期発見につながる疾患マーカーの研究は、これまで日本及び米国など世界中で実施されている。しかし、臨床現場での実用化に至ったものは少ないのが現状だ。この原因として、疾患マーカーの探索研究が限られた検体群を用いて実施することを余儀なくされる場合が多く、さらには普遍的な研究が実施されないことが指摘されている。

 これを受け、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は18日、独立行政法人国立がん研究センター(NCC)、東レ<3402>及びアカデミア、企業等他7機関と共に、健康診断などで簡便にがんや認知症を検査できる世界最先端の診断機器・検査システムの開発に着手すると発表した。

 NEDOは、これまでにもがんの早期の診断・治療のために多くのプロジェクトに取り組んできたが、今般、患者への負担が小さく、より早期に一度に様々ながんを診断できる技術の開発を支援することとした。

 このプロジェクトでは、NCCに蓄積された膨大な臨床情報とバイオバンクの検体、マイクロRNA腫瘍マーカーについての研究成果を基盤として、東レが開発した高感度なDNAチップと、東レとNCCが共同開発した血液中に存在するマイクロRNAバイオマーカーの革新的な探索方法を活用する。そして、体液中のマイクロRNAの発現状態についてのデータベースを構築、網羅的に解析する。この測定技術により、乳がんや大腸がんなど13種類のがんや認知症の早期発見マーカーを見出し、これらのマーカーを検出するバイオツールを世界に先駆け実用化を目指す。

 具体的にはNCC及び独立行政法人国立長寿医療研究センター(NCGG)のバイオバンクに保存されている数十万検体の血清から、13種類のがん及びアルツハイマー病等の認知症について、疾患の早期発見マーカーや、医療現場で必要とされる様々な疾患マーカーの探索を網羅的に行う。これにより、確度の高い疾患マーカーを得ることができる。

 さらに、日本発のバイオツール技術によって高感度・高精度なマイクロRNA疾患マーカー検出ツールを開発することにより、一部欧米に先んじられている検査・診断分野の開発における日本の地位を引き上げることが可能となるという。

 また、プロジェクトでは、マイクロRNAの研究を進めるNCC研究所 分子細胞治療研究分野 落谷孝広分野長を研究開発責任者とし、NCCの研究部門と臨床部門、東レをはじめとする9機関の連携、さらにNCCと8大学の共同実施によって実施される。アカデミアで運用されているバイオバンクの活用といった組織横断的連携に加え、産業界とアカデミア諸機関との協同、さらにNEDOによる継続的支援により実現を目指す。

 事業期間は2014年度~2018年度の5年間。事業規模は約79億円の予定である。(編集担当:慶尾六郎)