今週の振り返り 4日連騰し年初来高値を更新し1年を終わる

2012年12月29日 10:28

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「掉尾の一振」で末広がりの大納会高値引けが実現し、激動の2012年はハッピーエンドだった。

 「掉尾の一振」で末広がりの大納会高値引けが実現し、激動の2012年はハッピーエンド。

 前週末21日のNYダウは財政の崖問題の行き詰まりで120ドル安、短縮取引の24日も51ドル安と続落したが、為替レートは日本が三連休の間に、ドル円は83円台後半から85円寸前まで、ユーロ円は110円台後半から112円寸前まで円安が進んでいた。「掉尾の一振」で3月27日の年初来高値10255.15円を更新する期待をはらみながら、三連休明け25日の東京市場は日経平均152.29円高の10092.35円と1万円台を回復して始まった。直後に10100円台に乗せたが、あとは一進一退の小動きが続く。後場の2時台にじりじり下げ始めて最安値10030円までいくが、大引け15分前頃に突如、買い勢力が現れて株価が持ち直し、140.06円高の10080.12円で引けた。海外勢がクリスマス休暇中のためか売買代金は1兆1532億円と先週と比べて少なめ。為替はザラ場中ドル円85円、ユーロ円112円には乗らなかった。
 
 2時台の売り勢力かと考えられるのは個人投資家の「節税対策売り」で、年内に4営業日目決済を済ませるには25日が約定のリミットだった。大方は日経平均が1万円を割った21日で消化されたと思われたが、まだ残っていたようだ。一方、大引け間際の買い勢力と考えられるのは月末おなじみの「ドレッシング買い」。「日経平均寄与度御三家」のファーストリテイリング<9983>もソフトバンク<9984>もファナック<6954>も、分足チャートは全て大引け間際に一気に棒上げしている。

 値上がり銘柄は1000を超え、上がった業種は上から証券、不動産、その他金融、建設、精密の順で、金融緩和関連と輸出関連と公共投資関連が混在。下がった業種は下から鉱業、石油・石炭、陸運、空運、卸売だった。証券株代表の野村HD<8604>は6%以上の上昇で9連騰。売買高4位、売買代金1位に入った。メガバンクのみずほ<8411>、三菱UFJ<8306>はこの日も買われ、売買高ランキング上位の常連の三井住友建設<1821>は8円高でこの日も2位。東京電力<9501>が買われソフトバンクは3ケタの上昇だったが、トヨタ<7203>は下げた。シャープ<6753>は6日続伸後に4日続落で、22円安で値下がり率2位。相変わらず売買高3位、売買代金4位と商いは活発だった。

 25日のNY市場はクリスマスで休場。海外勢の多くも欧米の政治家もまだ休暇中。24日までのアメリカのクリスマス商戦全体の小売売上高がスペンディングパルス社から発表され、0.7%増で伸びは昨年より1.3ポイント鈍化し、威勢がよかったのは11月23日のブラックフライデーの頃だけだった。東京市場は「節税対策売り」勢力は25日で消え、「ドレッシング買い」勢力の本格出動はまだ先なので、26日の東京市場は午後に発足する第二次安倍内閣への評価も含めて、日本経済の今後の見通し、日本企業の実力、日本株の実需が純粋に問われると思われた。

 円安が進行して朝方の為替レートはドル円が2011年4月以来の85円台、ユーロ円が112円台に乗せたので、それを好感して日経平均は51.10円高の10131.22円で始まった。12月末の配当落ちの影響はほとんどなく、その後はおおむね10100円~10150円の値幅で一進一退だったが、2時台から切り上がって、安倍晋三自民党総裁が衆議院本会議で首相指名を受けた時刻には10200円を突破。終値は高値引けで150.24円高の10230.36円となり、年初来高値10255円まであと25円に迫った。売買代金は1兆3222億円と少なめだが、値上がり銘柄は1159で前日よりも増えた。

 東証33業種で値上がり業種の上位は海運、その他金融、鉄鋼、証券、倉庫、不動産などで、値下がり業種は電力・ガス、鉱業、食品の3業種だけだった。

 金融・証券株は、三菱UFJ<8306>が3円高、みずほ<8411>が3円高で売買高2位、三井住友FG<8316>が25円高、野村HD<8604>が13円高で年初来高値を更新し売買高5位、売買代金2位、大和証券G<8601>が12円高と全面高だが、さらに大きな存在感を示したのが業種別騰落率2位の「その他金融」で、オリコ<8585>が63円高で値上がり率2位、売買高4位、売買代金4位に入り、アイフル<8515>が50円高で売買代金5位に入った。

 円安進行で買われた輸出関連株では、自動車はトヨタ<7203>が50円高で売買代金3位に入り、日産<7201>が16円高、ホンダ<7267>が30円高。電機はシャープ<6753>が42円高と大きく上昇し売買高と売買代金で1位に入り、パナソニック<6752>は14円高、ソニー<6758>は36円高、東芝<6502>は6円高。日立<6501>は日経新聞が「日立社長が医療事業の再編を示唆」と報じて10円高になり、日立メディコ<6910>は制限値幅の上限の150円高と買われている。

 公共投資関連株では、建設で値上がり率が大きい順に福田組<1899>、世紀東急工業<1898>、大林道路<1896>、東京エネシス<1945> 。その次の三井住友建設<1821>は6円高で今日も売買高3位に入った。不動産は三井不動産<8801>が34円高、三菱地所<8802>が39円高で年初来高値更新、住友不動産<8830>が41円高と、好調が続く。「日経平均寄与度御三家」のファーストリテイリング<9983>は400円高、ファナック<6954>は410円高だったが、ソフトバンク<9984>は3日ぶりに下落し5円安。NTT<9432> 、味の素<2802>、東京電力<9501>、関西電力<9503>も下げている。

 第二次安倍内閣は26日夜に発足。安倍晋三新首相は「経済再生に最優先で取り組む危機突破内閣」と紹介し、経済閣僚は財務大臣兼金融担当大臣の麻生太郎元首相に、茂木敏充経済産業大臣、甘利明経済再生担当大臣という顔ぶれ。就任記者会見での新閣僚のうっかり失言はなかった。クリスマス休暇が明けて再開したNY市場のダウ平均は24ドル安で3日続落した。朝方の為替レートはドル円は85円台後半だが、ユーロ円は113円台に乗せ、円安進行を背景にシカゴ、シンガポールの日経平均先物は10300円台。27日朝の東京市場は「3月27日の年初来高値10255.15円を更新できるか」という期待が高まった。

 その願いは、いきなりかなう。日経平均始値は64.90円高の10295.26円で、すぐ10300円台に乗せて、アジア市場の堅調も下支えになりずっと小動きで推移した。結局、3日続伸の92.62円高の10322.98円と終値でも年初来高値を更新し、「掉尾の一振」によって目標を達成。東証1部の売買代金は1兆6416億円で、年間最少記録4605億円だった昨年の12月27日の約3.5倍に達した。これで連続11日間、1兆円を割り込んでいない。

 上がった業種は海運、証券、自動車、パルプ・紙、不動産、機械などで、下がった業種は電力、医薬品など。建設はさすがに上がりすぎたか下落業種に入った。相変わらず金融・証券は強く、売買高ランキング、売買代金ランキングで上位に入ったみずほ<8411>、野村HD<8604>、三菱UFJ<8306>は揃って年初来高値を更新し、オリコ<8585>も続伸した。ファナック<6954>、NEC<6701> 、安川電機<6506>も年初来高値更新。売買代金3位のトヨタ<7203>は100円高で3ケタ上昇。日産<7201>も買われた。セコム<9735>は50円高。一方、キヤノン<7751>が売られ、シャープ<6753>は売買が細って15円安で終値300円まで下げている。

 28日は1年の最終取引日の「大納会」。6連休前で利益確定売りも、月末、年末のドレッシング買いもある。為替レートは朝方、ドル円86円台半ば、ユーロ円114円台半ばと円安がさらに進行した。NYダウは18ドル安で4日続落したが、日経平均始値は83.38円高の10406.36円で4連騰。「株価の日米連動」など、どこかに飛んでいってしまった。

 午前8時50分は国内の経済統計の発表ラッシュだった。鉱工業生産指数は市場予測を大きく下回る1.7%低下だが12月予測は6.7%上昇。完全失業率は4.1%で0.1ポイント改善し有効求人倍率は0.80で変わらず。消費者物価指数(CPI)はマイナス0.1%と下落したが市場予測通り。家計消費は前年同月比プラス0.2%で、個人消費の底堅さはポジティブ要素になる。少しは明るさも見え、それが円安とともに日経平均始値を10400円台に押し上げたようだ。

 前場の日経平均は10400円を少し下回る水準で小動きだが、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回ってTOPIXが前日比マイナスになりかける場面もあり、利益確定売り勢力は元気に動いていた。それでもドレッシング買い勢力は日経平均寄与度の高い銘柄を買ってくるので日経平均は崩れない。

 金融株や証券株は今日も強く、みずほ<8411>、三菱UFJ<8306>、12日連騰の野村HD<8604>、オリコ<8585>、アイフル<8515>が売買高、売買代金ランキングを賑わせた。東芝<6502>やソニー<6758>など電機株も好調で、シャープ<6753>も上昇。自動車株も買われトヨタ<7203>は75円高で約3年ぶりに4000円台回復。一方、利益確定売りの犠牲になったのは三井不動産<8801> や東京建物<8804>や、東京電力<9501>、関西電力<9503>など電力株、12月に上げ続けた海運株、建設株だった。

 後場に入ると一段高で10400円台で推移するようになり、このまま終わるかと思いきや、利益確定売り勢力は午後3時の大引け間際に大逆襲。最後に10400円を割らせ、ローソク足を白から黒に塗り替えた。とはいえ終値は72.20円高の10395.18円で、1月4日の大発会から23%上昇して13年ぶりに大納会で終値最高値をつけた。売買代金は1兆4746億円で大納会の1兆円越えは5年ぶりである。

 五輪三連覇を達成し国民栄誉賞を受賞した吉田沙保里選手が大納会セレモニーのゲスト。東証の斉藤社長は「掉尾の一振でした」と末広がりを喜び、吉田選手が鐘を5回叩いて、最後に全員で手締めを行って2012年の取引を締めくくった。

 来週、来々週の展望 上昇の「踊り場」が来ても、それもまたよし

 東京市場の仕事始めは1月4日の大発会。来週は金曜日のその1日だけで、2013年の日本経済、株式市場が本格的に動き出すのは7日の月曜日からになりそうだ。
 
 大発会は例年、ご祝儀買いも入って日経平均株価が上がることが多く、最近10年間では9勝1敗。15年間でも11勝4敗という好成績である。だがその後は、少し心配なデータがある。大納会が年初来高値をつけた1989年、1999年の翌年1月の日経平均は、ともに下落しているのだ。ただ、その二つの年と比べると現在の株価水準ははるかに下なので、単純比較はできないという意見もある。それとは別の観点で、「そろそろひと休みしてもいいのではないか」と話す市場関係者は少なくない。エネルギーを温存するには調整局面が必要だという意見で、日経平均1万円、PBR(株価純資産倍率)1倍という水準は心理的にも株価指標的にも、「踊り場」に適していると言えなくもない。

 国内政治は第二次安倍内閣が本格始動するが、11日にも閣議決定される見通しの緊急経済対策の中身が事前に伝わると、それを材料にして上がる銘柄が出てきそうだ。補正予算案の閣議決定は15日の予定だが、2013年度本予算もそれと並行して編成の基本方針が決まる。自民党の議員は3年ぶりに予算編成に関与できるぞと張り切っているので、思わず口を滑らせてくれるかもしれない。1月21~22日の日銀の金融政策決定会合に向けた動きも7日頃からあわただしくなりそうで、政府と日銀の政策協定の中身をめぐっての「麻生発言」で為替や株価が動くことも考えられる。「安倍相場」が「麻生相場」に衣替えするかもしれない。

 アメリカの財政の崖問題を審議する米議会は12月30日に召集される。年内全面決着は難しそうだが、財政支出のストップで連邦政府の機能の一部が止まるような事態を避けるために、何らかの暫定措置を議会が決議する可能性はある。暫定措置を積み重ねて「崖」の角度をゆるやかにし、経済への悪影響を緩和しながら時間をかけて最終的な合意を目指すという「ソフトランディング」のシナリオが、現実味を帯びてきている。それならNY市場への影響も限定的だろう。

 経済指標は、国内は7日に発表される日銀のマネタリーベースが最初。10日には景気動向指数、11日には11月の経常収支、貿易収支と12月の景気ウォッチャー調査が発表される。アメリカは1月1日は休日で1月2日が仕事始め。この日にISM製造業景況指数が出る。3日はADP全国雇用者数と、失業率目標を追加して金融緩和した12月のFOMCの議事録が明らかになる。4日は注目の雇用統計の発表日で、失業率、非農業部門就業者数はどれほど改善されているか。8日には消費者信用残高、11日には貿易収支とミシガン大学消費者信頼感指数速報値が発表される。ヨーロッパでは4日にユーロ圏消費者物価指数速報値、7日はユーロ圏生産者物価指数、8日はユーロ圏消費者信頼感指数確報値、小売売上高、失業率がそれぞれ発表される。9日には第3四半期ユーロ圏GDP改定値が出る。10日にイングランド銀行が政策金利、ECB(欧州中央銀行)が金融政策を発表するが、これは要注目。12月はスペインなど重債務国の国債発行が順調に消化できており、ECBの発表内容次第ではユーロ高が進んで日本の株価の押し上げ要因になりそうだ。

 2013年のスタートは、年末年始休みが入り年が変わることで、流れが少し変わるかもしれない。週の日経平均の騰落が4勝1敗の急上昇ペースから3勝2敗、2勝3敗が交互に現れるパターンに変わったとしても、日経平均1万円の水準は維持できる。その間に円安による企業業績の回復、経済状況の好転が数字に現れてくれば、株価は政治家の発言やあやふやな思惑に左右されるような状態を脱して「自律回復」の軌道に乗ることができるだろう。それなら上昇の「踊り場」が来たとしても、それもまたよし、である。(編集担当:寺尾淳)