2012年、株式市場の振り返り

2013年01月01日 09:38

 政治に翻弄される激動の株式市場。その転換点になった日は、バレンタインデーと七五三だった。

 2012年の株式市場は、どう動いたか。1年間の日経平均の値動きを分析すると、大きく次の5つの時期に分かれる。こんなにくっきりと分かれるのも最近では珍しい。

 第1期 冬場の小拡大期。第2期 「バレンタインデー緩和」大相場。第3期 4月、5月の急落期。第4期 小山3回の弱々しいボックス相場。第5期 突破力抜群の急上昇「安倍相場」。それぞれ、こんな特徴がみられた(日経平均の1円未満の数値は切り捨て)。

 
 第1期 冬場の小拡大期(1月4日~2月13日)

 1月4日の大発会の終値は8560円。1月から2月にかけて為替がドル円で75円台をつける超円高の局面もあったのだが、2月8日に日経平均は高値も終値も9000円台に今年初めて乗せた。この時期はギリシャ支援が順調でヨーロッパの不安が一時和らぎ、中国など新興国の経済や株価が比較的堅調で、世界的に株価は上がっていた。第1期では前年に引き続いてDENAやグリーのようなソーシャルゲーム関連銘柄の元気さが目立っていた。

 
 第2期 「バレンタインデー緩和」大相場(2月14日~3月27日)

 2月14日のバレンタインデーに、日銀は予想外に大きな金融緩和策を発表する。これが市場の弱気の虫を一掃し、「日銀のバレンタインデーのプレゼント」と呼ばれた。2月14日の日経平均終値は9052円だったが、翌15日は一気に9200円台乗せ。その後、17日に9300円台、20日に9400円台、22日に9500円台、24日に9600円台、28日に9700円台と、2月の後半だけで671円も急上昇した。3月に入っても勢いは衰えず、3月9日には最高値が1万円を突破し、終値は9800円台を一気に抜いて9900円台乗せ。14日には終値で1万円台に乗せ、翌15日には1万100円台、そして3月期決算銘柄の配当や株主優待を受けるための「権利確定日」だった3月27日には、高値引けで10255円という今年前半の最高値をつけている。1ヵ月半足らずで日経平均が1200円以上、13.3%も上昇する大相場で、市場関係者の多くは1万円台を当分維持できるだろうと思っていた。

 この第2期は円安の時期でもあり、3月には一時ドル円で84円台まで円安が進んでいた。注目を浴びた代表銘柄は日経平均寄与度が大きいファーストリテイリングで、冬が寒かったために「ヒートテック」が売れに売れて業績を押し上げ、買いを集めた。

 
 第3期 4月、5月の急落期(3月27日~6月4日)

 4月は、3月までの上昇相場がまるでウソのように日経平均は下落し続けた。下落は5月に入っても全然、止まらない。「山高ければ谷深し」で、3月27日の年初来高値10255円から6月4日の年初来安値8295円まで、2ヵ月余りで1960円、19.1%も下落。途中、踊り場はあっても100円以上反発する局面はほとんどなく、株価の「崖」を滑り落ちていった。

 その大きな要因の第一は為替で、日経平均が年初来安値に沈んだ6月初めにはドル円が77円台まで円高が進んでいる。3月の84円台から3ヵ月足らずで7円も円高が進行すると、企業業績への負のインパクトは大きい。第二はヨーロッパの債務不安で、ギリシャのユーロ圏離脱懸念に加えてスペインの金融システム不安の問題が新たに浮上し、それが円高の要因になった。第三は「コンプガチャ課金問題」が起きてソーシャルゲーム関連銘柄が大きく下げたり、冬物シーズンが終わってファーストリテイリングの業績が変調をきたして下げるなど、第2期までの株価を支えてきた分野や銘柄が失速したことだった。それに加えて主要企業の3月期決算がおしなべて悪かったことも、投資家の意欲をそいだ。

 第4期 小山3回の弱々しいボックス相場(6月5日~11月13日)

 6月、日経平均はようやく大底を打ったが、市場参加者は大きく減少し、東証1部売買代金は薄商いが続き、1兆円を超える日のほうが珍しくなる。その後、7月4日の9104円、8月23日の9178円、9月21日の9110円と日経平均の小さな山が3回あったが、谷底との間で上下動を繰り返すボックス相場で、おおむね9000円以下の低水準で推移した。ギリシャ、スペインの問題は一段落したが、それでも時折、ヨーロッパ発の悪いニュースが伝わって日本の株価を押し下げた。

 この頃はテクニカル分析の全盛期で、株価の山の頂点と谷の底を結んで上値抵抗線、下値支持線を引くと年末に向けて徐々に上昇トレンドだとか、チャートが「W底」「逆三尊」のパターンだから今後は上昇するサインだとか言われたが、結局、大外れした。

 
 第4期は9月に一時76円台まで円高が進行したが、大きなニューと言えば第2四半期決算の発表でシャープ、パナソニック、ソニーの巨額最終赤字が改めて明らかになったこと。この「三兄弟」はその後も1ヵ月以上、平均株価の足を引っ張り続けた。

 9月13日にアメリカのFRBが量的緩和第3弾「QE3」を発表しても、日本株の上昇は1週間程度で打ち止め。11月6日にアメリカのオバマ大統領が再選されても「どこ吹く風」で、11月10日に京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞受賞が決まっても、医薬品や創薬ベンチャーなどの関連銘柄がちょっと買われただけで、日経平均の上昇にはほとんどつながらなかった。

 
 第5期 突破力抜群の急上昇「安倍相場」(11月14日~12月28日)

 沈滞ムードのまま半年以上が過ぎた11月14日、株式市場に突然、革命的な出来事が起こる。日経平均終値8664円とこの日も売買が振るわず終えた大引け後、国会内の野田首相(当時)と安倍自民党総裁(当時)の党首討論で突然、野田首相が「解散・総選挙をする」と言い出した。安倍総裁もビックリしたが、ほとんどの政治家と同様、「総選挙は早くても年明け後」と思っていた市場関係者にとっては、まさに「ビッグサプライズ」だった。2日後に衆議院は解散し、総選挙の投票日は12月16日と決まった。

 翌日、「七五三」の11月15日は、今年二度目の大相場の始まりだった。この日は8800円台で、16日は9000円台を回復。その後、安倍総裁が公共投資の大幅増額、無制限の金融緩和、国債の日銀直接引き受け、日銀法の改正など大胆発言を連発。そのたびに為替が円安に振れて株価が上がったので、「安倍相場」と呼ばれた。19日に9100円台、21日に9200円台、22日に9300円台、27日に9400円台、少し休んで12月6日に9500円台、13日には9600円台を飛ばして9700円台に乗せる快進撃。16日の総選挙で自民党が圧勝すると、前日のNYダウが下がろうが、国内経済指標に悪い数字が出ようか、騰落レシオなどテクニカル指標に「過熱」のシグナルがつきっぱなしになろうが一切お構いなしで、まさに「突破力抜群」の強気相場。17日に9800円台、18日に9900円台、19日に1万円台と3連騰で一気に大台をクリアし、その後、26日に10200円台、27日に10300円台に乗せてついに3月27日の年初来高値を更新。28日の大納会はさらに伸ばして最高値で10400円を突破して終値は10395円とし、高値引けの末広がりで2012年の取引を終えた。この間、日経平均終値が前日比で値下がりした日は30営業日中8日しかなく、ほぼ3勝1敗の超ハイペースで11月14日から1731円、19.9%も上昇した。第2期の大相場とほぼ同じ日数だったが、上昇率は第5期のほうが6.6ポイントも上回っている。

 第5期に大きく上がったのは、「国土強靱化」「公共投資増額」で建設、不動産、「デフレ克服の金融緩和」で銀行、証券、ノンバンク、そして円安を好感した自動車、電機、機械などの輸出関連株だった。最終盤ではバブル時代に全盛だった「含み資産株」という言葉が久々に聞かれた。

 
 2012年の日経平均の年間上昇率は22.9%でNYダウの7.2%を上回り、いまバブル過熱中と言われる香港ハンセン指数の22.7%よりも上回った。アップダウンは激しかったものの、「終わりよければ全てよし」なのかもしれない。(編集担当:寺尾淳)