ソフトバンク、iPhone依存症から脱却できるのか

2013年01月06日 08:09

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順調にユーザー数を増加させてきたソフトバンクだが、顧客満足度調査において、ライバルとの差を露呈されてしまった

 IT専門調査会社であるIDC Japanが発表した2012年第3四半期の国内モバイルデバイス市場(スマートフォン市場、タブレット市場を含む)によると、国内スマートフォン出荷台数は、前年同期比50.2%増の797万台となっている。この結果、国内の全携帯電話端末出荷に占めるスマートフォン端末の出荷比率は72.1%にまで上昇。要因としては「iPhone 5」など話題性の高いスマートフォンが市場投入されたことなどが挙げられる。また、タブレット市場も、前年同期比106.8%増の101万台まで拡大。LTE(4G方式)搭載のタブレット端末の登場によりアンドロイドOS搭載端末の出荷が伸び、先進ユーザー層への浸透が進んでいることが要因と考えられる。

 ここ数年、通話やインターネット接続、多様なアプリケーションを搭載したスマートフォンやタブレットなどの情報通信端末の普及は、年々その勢いを増している。なかでもAppleのiPhoneの登場は画期的で業界に大きな進化をもたらし、国内で最初にこのiPhone 3Gを取り扱ったソフトバンクは、大きく伸長。それまでNTTドコモやKDDI(以下au)が圧倒的な強さを持っていた携帯電話・スマートフォン市場において、シェアを一気に拡大する快進撃を遂げたのだ。

 そもそもソフトバンクは2006年にボーダフォン日本法人を買収することで移動体通信事業に参入。2008年にはAppleのiPhone 3Gの販売を開始するなど、モバイルインターネットの利用に適した携帯電話端末を普及させることにより、モバイルインターネット利用を推進してきた。2010年のiPad発売、2012年はiPad miniを登場させるなど、常にこの業界の話題の中心となっている。

 また、同社は直近の2013年3月期第2四半期の連結決算では、売上高1兆5,861億円(前年同期比3%増)、営業利益(償却前)[EBITDA]は5,919億円(同11%増)、営業利益は4,027億円(同8%増)となっている。営業利益率は25%となり、NTTドコモやau、また米国上位のAT&T、Verizonと比較してもNo.1の水準を確保。さらに営業利益は7期連続で最高益に、経常利益は3,630億円(同15%増)、当期純利益は1,694億円(同22%減)と好調をキープしている。

 しかし、好調を維持し続けているソフトバンクにとって良いニュースばかりではないようだ。MMD研究所が昨年12月にNTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルのスマートフォンユーザー664名(20歳~59歳)を対象にして、自身が利用しているキャリアの料金プラン、電波状況、通話エリアなど計9項目について満足度調査を実施したところ、総合的なキャリア満足度はauが64.6%で最も高い結果となり、2位はドコモ(48.4%)、3位はソフトバンク(46.9%)という結果になっている。項目別に分けると、auは「電波状況」「ブランドイメージ」「独自サービス」などで高い満足度を得ているようだ。

 順調にユーザー数を増加させてきたソフトバンクだが、顧客満足度においてはライバルとの差を露呈されてしまった。今回の調査で、スマートフォン購入時に重視するキャリアで最もニーズが高かったのは「電波の良さ」だという。ソフトバンクは昨年、“プラチナバンド”と呼ばれる900MHz帯における特定基地局の開設計画を認定し、7月25日から900MHz帯を使用する通信サービスを開始した。さらに、「イー・モバイル」ブランドでモバイル通信サービスを展開してきたイー・アクセスを完全子会社化し、LTEで使える新たな周波数帯 (1.7GHz)を獲得するなど、今まで弱点とされていた電波状況においても、強化することに成功した。

 後発でiPhoneを取り扱いに参入し、MNP(ナンバーポータビリティ)では、昨年圧倒的に他キャリアからユーザーを獲得に成功し、1位となったau。これ以上のユーザー流出を防ぐために、アンチiPhoneの考えを徹底し、アンドロイドや新OSで2013年は巻き返しを図るNTTドコモ。昨年以上の激戦が予想される、携帯電話・スマートフォン市場において、ソフトバンクがサービスや通信を向上させ、顧客の満足度を挙げる基本的なスタンスを徹底していくのか、あるいは、お得意の派手な買収劇で大きなインパクトとイメージを作り上げ、その存在感を増していくのか。今後のソフトバンクには、iPhone依存症から抜け出す新たな「強み」が必要になってくるのではないだろうか。(編集担当:宮園奈美)