3ケタ安で始まり後場一時3ケタ高まで上昇

2013年01月09日 20:25

 今月後半はアメリカ企業の通期の業績が確定する第4四半期決算がピークを迎えるが、その第一弾のアルコアの決算発表を前にNYダウは様子見ムードがひろがり55ドル安。為替は朝方、ドル円は86円台と87円台を行ったり来たりし、ユーロ圏の失業率が過去最悪を更新した上にフランス国債の格下げの噂まで流れてユーロ安が進行し、ユーロ円は113円台後半。大きな上昇相場の後でポジション調整、日柄調整など「調整」という言葉が飛び交う中で海外の機関投資家も先物売りポジションを増やし、日経平均は102.39円安の10405.67円と3ケタ安で始まった。

 ところが、チャート上で大納会と大発会の間の株価の「窓」が埋まり、為替も円安に振れたため、先物の押し目買い、追撃買いが入って日経平均は下げ幅を圧縮。午前10時30分過ぎには10500円台を回復しプラス圏に浮上した。買われる銘柄も小売などディフェンシブ系から自動車など輸出関連主力株にスイッチし、後場に上げ幅はさらに拡大。一時は3ケタ高に乗せた。終値は70.51円高の10578.57円で、朝の最安値と午後の最高値の差が222円に達した。売買代金は1兆9394億円で今週は尻上がりに増えている。

 セクター別では、値上がり上位は証券、不動産、ガラス・土石、機械、建設で、値下がり上位はその他金融、鉱業、食品、電力・ガス、パルプ・紙。値上がり率1位の証券は、来年1月に現行の証券優遇税制に代わって施行される予定の少額投資優遇税制「日本版ISA」で、期間を3年から5年、対象総額を300万円から500万円に拡大するニュースが買い材料で、野村HD<8604>は17円高。値下がり率6位の空運は、ボストンの空港で2日続けて最新鋭機ボーイング787がトラブルを起こしたJAL<9201>が15円安。同型機を運航する全日空<9202>が1円安。NY市場ではボーイング株が続落している。

 雇用増、給与増を行った企業に法人税を減税する新たな優遇策が日経新聞朝刊で報じられ、個人消費の拡大に即効性があり、しかもちょうど3~11月決算発表が相次いだこともあって、朝は小売セクターに注目が集まった。営業増益を背景に2円増配と報じられたセブンアイHD<3382>は終値も47円高だったが、経常利益が最高益を更新したファミリーマート<8028>、経常利益26%増で最高益を更新した良品計画<7453>は、高く始まったが後場はマイナス圏に沈んだ。「デフレの勝ち組」こと日本マクドナルドHD<2702>は9ヵ月連続減少中の既存店売上高が9年ぶりに前年を割り込み、11円安だった。

 逆に朝が安くてザラ場中にプラス圏に上がったのが自動車で、トヨタ<7203>もホンダ<7267>もマツダ<7261>も、中国での生産回復が伝えられた日産<7201>も、アメリカでの新車販売が4年連続で増加した富士重工<7270>も上げた。しかし、GM、IBMとの提携を発表したパナソニック<6752>1円安、ソニー<6758>4円安、シャープ<6753>2円安と電機株はふるわなかった。今日は三菱重工<7011>など防衛関連株が買われている。

 前日大きく下げた大手不動産株は急反発して値を戻した。東宝<9602>による完全子会社化が発表された東宝不動産<8833>が100円高で値上がり率7位に入り、東宝は70円高。同じ阪急阪神東宝グループの都内含み資産銘柄の東京楽天地<8842>も買われ、東京都競馬<9672>は5日続伸。猪瀬直樹都知事がPRのためロンドンに出発したが、市場の読みは五輪誘致争いでマドリード、イスタンブールに絶対負けるはずがない、か。

 ファーストリテイリング<9983>は続伸が7日でストップ。ソフトバンク<9984>はスプリント買収を邪魔しそうな企業が出現して下げた。ファナック<6954>は160円高で後場の日経平均を押し上げた。オリコ<8585>とアイフル<8515>の「ノンバンク大商い兄弟」は今日も仲良く売買代金ランキング1位、2位に入ったが、アイフルは昨年来高値を更新し3円高でも、オリコは9円安と明暗が分かれた。

 今日の主役は「学習塾銘柄」。祖父母が孫の教育資金を一括贈与すると贈与税を非課税にする制度を検討中というニュースが伝えられると後場、猛烈な勢いで買いが集中し、値上がり率1位から5位まで大手学習塾を経営する学研HD<9470>、TAC<4319>、東京個別指導学院<4745>、秀英<4678>、進学会<9760>が占め、リソー教育<4714>も9位に入った。さらに午後2時過ぎ、安倍首相が「スポーツ庁」の開設を指示したという第一報が伝わると、セントラルスポーツ<4801>、ミズノ<8022>、ゴールドウイン<8111>などが大引けにかけて急騰し、勉強とスポーツの「文武両道」で株価が上がった。緊急経済対策、2013年度税制改正がらみで政府・自民党が政策を小出しにするたび、関連銘柄の株価が動く。(編集担当:寺尾淳)