就活の「リアルな出会い」が明るみに出すもの

2013年01月10日 08:06

昨年12月1日に、来年卒業する大学3年生の就活がスタートしてから1ヶ月以上が経った。

 リクルートホールディングスの発表 によると、新卒採用数の見通しは3年連続で増加。来春卒業予定の大学生の就職内定率も63.1%と、2年連続で改善している。

 昨今の就職活動におけるキーワードは「リアルな出会い重視」だろう。というのも、企業の就職情報サイトへの依存度が下がり続けているからだ。

 HR総合調査研究所によると、就職ナビが自社の採用において「これまでと変わらず中心的な役割を担う」とする回答は、昨年の69%から今年は55%に激減。300名以下の中小企業に限れば45%まで下がるという。企業側は就職ナビ経由の採用には限界があることに気づき、「リアルな出会い」を求めている。

 昨年は岩波書店の「縁故採用」宣言が話題を集めたが、学生の大量応募に頭を悩ませる有名企業が、採用の効率化を求めるのは当然だろう。学内説明会やリクルーター制を重視する傾向は、今後も加速すると思われる。一部の有名企業が重視する「リアルな出会い」とは、目に見えない「学歴フィルター」の言い換えかもしれない。

 一方、中堅・中小企業は、高い料金を払って就職ナビを利用しても学生が集まらない。説明会の半数近くが当日キャンセルということも珍しくないという。それなら就職ナビに頼らず、採用実績校に的を絞った学内説明会などを増やす方が得策だ。産学連携で、学生と中小企業の出会いをサポートする仕組みも動き始めている 。

 このような中堅・中小企業にとっての「学生とのリアルな出会い」は、「大手企業を諦めた学生を確保する」採用になる可能性もある。だが就職ナビ経由の大量応募がミスマッチを生む中で、大企業と中堅企業それぞれにとっての「リアル」が明るみに出るのは良いことかもしれない。なぜなら未だに多くの学生が、就職情報サイトで得られる情報中心の企業選びをしているからだ。ミスマッチを解消するためにも、企業は自社にとっての「リアルな出会い」が何を意味するのか、開示していくことが必要だろう。