構造改革中のソニー<6758>だが、30日に発表した2015年3月期の連結決算のうち、最終損益は1259億円の赤字であった。これは前期とほぼ同水準の赤字であったものの、構造改革により業績の改善が進んでいるとして、同日に発表した16年3月期の業績予想では、赤字から一転して1400億円の最終黒字を見込んだ。もしこれが実現すれば、3年ぶりの黒字決算となる。
15年3月期の売上高は前期比5.8%アップの8兆2158億円、営業利益は前期のおよそ2.5倍である685億円、最終損益は1259億円の赤字であった。このうち、赤字が長期化しているテレビ事業は、経営合理化など影響により営業利益が83億円に増加し、11年ぶりの黒字となった。ただし販売不振が続くスマートフォン(多機能携帯電話)事業で多額の損失を計上したことから、最終損益は赤字であった。
そして同日に発表した16年3月期の業績予想では、売上高で前期比3.8%ダウンの7兆9000億円。営業利益で前期と比べて4.7倍となる3200億円、そして1400億円の最終黒字を見込んでいる。ソニーは金融事業、また音楽や映像、ゲームなどの事業が改善したことを受けて、15年3月期を上方修正していたが、16年3月期ではそれらの事業に加えて、家電事業でも業績回復が進むとの見込みから、大幅な黒字転化を予想した。さらに16年3月期もスマートフォン事業の人員削減などで一部の構造改革費用を計上する予定だが、前期の構造改革によって今期はコスト削減効果が現れるものとみている。もしこの黒字が達成されれば、資産売却で430億円の当期純利益を計上した13年3月期以来3年ぶりの最終黒字となる。
ただしソニーは、業績不振のあおりを受けて期初に発表した業績予想を2年連続で下方修正してきている。なかでも大幅な下方修正となったのが14年3月期の業績予想で、期初には500億円との最終黒字を予想していたが、蓋を開けてみれば1200億円以上の赤字となった。こうしたことを考えると、今期の業績予想もそのまま受け止めることはできない。金融事業、プレイステーション(PS)4の好調さによりゲーム事業などが伸長しているという好材料はあるものの、ソニーが健全な経営状態にあるかどうかを判断するには、もう少し時間が必要だ。(編集担当:滝川幸平)