日本メーカーテレビ事業の相次ぐ撤退は、サムスン電子やLG電子などの韓国メーカーとの競争激化によるところが大きい。日本メーカーは4Kテレビなどの高画質機種で対抗しようとするも、安値攻勢を展開する韓国、中国の勢いに押される状況を長く打開できていない。
東芝<6502>がテレビ事業の自社生産から完全撤退することが報じられた。日本やアジア向けのテレビを生産していたインドネシアの自社工場と、中東やアフリカ向けのテレビを生産しているエジプトの合弁工場を売却する方針で動いているようだ。売却合意は春頃を目指し、その後は、テレビ事業は開発のみ国内拠点で継続し、生産は他社に委託することになる。
パナソニック<6752>も中国でのテレビ生産から撤退に向けて動いている。すでに1月30日で生産を停止し、今後は販売のみ行い、生産は他社に依頼する予定だ。パナソニックのテレビ事業は赤字が続いており、中国だけでなくアメリカでの販売も低迷している。中国での生産撤退に続き、北米向けのテレビを生産しているメキシコの工場も売却の可能性が高い。
さらにシャープ<6753>も、来年3月をめどに北米向けのテレビを生産しているメキシコの工場を売却する方向で動いている。シャープは2月3日、2015年3月期連結最終決算が300億円の赤字に転落するとの見通しを発表した。テレビを含むデジタル情報家電事業は120億円の赤字となり、建て直しが急務となっている。
一方ソニー<6758>は、テレビ事業を分社化したことによるコスト削減の成果が出たことと、北米・ヨーロッパでの販売が好調なことから、テレビ事業の通期黒字化の見通しが強まっている。しかし、企業全体の再建に向けてはまだ道半ばだ。
こうした日本メーカーテレビ事業の相次ぐ撤退は、サムスン電子やLG電子などの韓国メーカーとの競争激化によるところが大きい。10年頃から、韓国メーカーによる世界のテレビ市場での躍進は続き、今やサムスン電子が世界1位、LG電子が世界2位を維持し、両社だけで世界市場の約50%を占めている。さらには中国メーカーも追い上げ、日本メーカーは4Kテレビなどの高画質機種で対抗しようとするも、安値攻勢を展開する韓国、中国の勢いに押される状況を長く打開できていない。
今後日本の大手家電メーカーは、テレビ事業においてはコスト削減・規模縮小を進めながら技術開発、高品質機種の販売に絞って力を入れていく形になりそうだ。企業全体として家電事業から、エネルギー事業などに転換していく動きも強い。残念ながら「家電ならメイドインジャパンが世界一」という時代は終わりつつあるが、各社の建て直しと次の一手に期待して今後の動きを見守りたい。(編集担当:久保田雄城)