世界規模で拡大するスマートシティ市場。日本的スマートシティの理想型とは

2015年06月13日 19:06

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埼玉県では、このエネルギーの地産地消モデルを同県だけでなく全国に発信いていくことを目標に掲げている

 地元で生産したものを地元で消費する「地産地消」の考え方は、何も農業や漁業に限ったことではない。エネルギーに対しても今、「地産地消」の意識が高まりつつある。

 太陽光発電など再生可能エネルギー設備の発展と普及にともなって、エネルギーを的確にマネジメントするスマートハウスやスマートシティの市場が世界規模で膨らんでいる。日経BPクリーンテック研究所の市場予測によると、世界のスマートシティ市場は2030年には230兆円にまで達し、累積3880兆円にのぼる巨大市場になるとみられており、先進各国ではスマートシティやスマートタウンを最重要国家戦略の一つに位置付けて推進している国も少なくない。日本でも2011年の東日本大震災以降、節電や省エネ意識の高まり、さらには防災などの側面から分散電源や蓄電池などへの関心も広がっていることなどを背景に、全国各地でスマートシティの構想が進んでいる。

 地方自治体も住宅メーカーなどと連携して、スマートシティに対して積極的な取り組みを始めている。例えば、江の島や湘南海岸などの観光地で知られる藤沢市は、パナソニック<6752>と共同で、約1000世帯、3000人が暮らす低炭素型住宅街のプロジェクトを2010年から立ち上げており、14年11月には「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(SST)」の第一期分譲を開始しているし、今年3月には大和ハウス工業<1925>が愛知県の豊田市から約7000平方メートルの用地を譲り受け、「SMA×ECO TOWN 豊田柿本」を開発することを発表している。21棟の戸建住宅と2棟の集合住宅の建設が予定されており、住宅のみならず、タウン内の調整池にも太陽光発電システムとリチウムイオン蓄電池を設置し、発電・蓄電機器とメーター類も設置して、スマートステーションを構成するという。また、16年4月からの電力小売の全面自由化をにらんだ取り組みとして、戸建住宅のうち3棟に新電力による一括受電と電力融通の仕組みを導入していることでも注目されている。

 また、興味深いところでは埼玉県の「埼玉エコタウンプロジェクト」がある。この取り組みの最大の特長は、多くのスマートシティが新規開拓市場であるのに対し、既存街区を住民目線でエコタウンに変えていくところにある。2012年に2つのモデル市と3つのイニシアティブ・プロジェクトからスタートしたこの「埼玉エコタウンプロジェクト」は順調に進んでおり、今年6月からは新たに小規模な既存住宅街区をエコタウンに変えていく「ミニエコタウン事業」が開始されている。

 「ミニエコタウン事業」の協働事業者には、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホーム他3社が選ばれ、同社がこれまで埼玉県内で販売施工した、分譲地計214戸を「ミニエコタウン」のモデル街区とし、住民への創エネ、省エネ、蓄エネの働きかけ及び施工、取り組み効果の検証を行なっていくという。

 埼玉県では、このエネルギーの地産地消モデルを同県だけでなく全国に発信いていくことを目標に掲げているが、その狙い通りに既存街区を住民目線でエコシティに変えていく活動が全国的に広がれば、日本のスマートシティ化も大きく加速するかもしれない。また、新しく作るばかりでなく、今あるもの、先祖から受け継いだ家や土地を有効に活用することも大きなエコ活動であり、日本的なスマートシティの一つの理想型ともいえるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)