日韓間に横たわる最大課題は慰安婦問題 野田前総理

2015年06月30日 10:19

 野田佳彦前総理は韓国の憲法裁判所が慰安婦問題に関する韓国政府の不作為は違憲とする判決を下して以来、特に、日韓関係に慰安婦問題が大きな課題になっているとの受け止めを自身のかわら版(6月29日アップ電子版)でうかがわせた。

 野田前総理は「2011年12月17日、当時の李明博大統領を京都迎賓館に迎え、私は歓迎晩さん会を開きました。翌々日が李大統領の誕生日であり結婚記念日でもあったので、食事の後にサプライズでバースデーケーキによるおもてなしもしました。大統領は終始上機嫌でした。とてもとても和やかなムードでした」と紹介。

 「ところが、翌18日の首脳会談は空気が一変し、険悪な対決色になってしまいました。大統領が相当な時間を費やして慰安婦問題の解決を迫ってきたからです。韓国の憲法裁判所が慰安婦問題に関する韓国政府の不作為は違憲とする判決を下したことは承知していました。したがって、この問題について大統領が全く言及しないことはないだろうと予想していました。が、大統領は予想をはるかに超えて執拗でした」と対応の急変ぶりに驚いたとしている。

 「私は、慰安婦問題は1965年の日韓請求権協定によって法的には完全に決着し、解決済みという立場で、要求を突っぱね続けました。そして、ソウルの在韓日本大使館の前に慰安婦を象徴する少女の像が設置されたことに触れ、撤去するよう要請したところ、相手はより一層感情的になってしまいました」と紹介している。

 「2012年6月、日韓両政府は幅広い防衛秘密を共有する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結を決めましたが、その署名の数時間前に突如韓国側から延期の通報がありました。韓国の国会の反発を恐れてのことだったようですが、国会承認のいらない行政協定が突然反古になるとはこれまた驚きました」と、好転の兆しが見え始めた日韓関係を歓迎しながらも、油断せずに対応するよう日韓関係の構築を求めている。

 軍事情報包括保護協定の締結について、5月30日の日韓防衛相会談でも、中谷元防衛大臣が早期の締結合意を呼びかけたが、明確な答えは得られていない。ただ、韓国も安全保障環境の変化に対応する必要性は認識していることから、歴史認識、特に慰安婦問題をどう乗り越えるか、韓国政府も慰安婦問題の不作為は違憲と判決されているだけに、両国政府に外交上の政治的着地点が求められている。(編集担当:森高龍二)