初心者でも簡単! 大人の電子工作がブームになりそうな予感

2015年07月11日 19:29

電子工作

マイコンボードの発達で初心者でも簡単に電子工作が可能に。ロームグループのラピスセミコンダクタも、業界最小の低消費電力マイコンボード「Lazurite Basic」を携えて新規参入を果たした。

 「趣味は何?」と誰かに聞かれれば、大多数の人が答えに困るのではないだろうか。無難に「読書」「映画鑑賞」と答えておけば、おそらく問題はない。しかし、それでは面白くない。質問を投げかけてきた相手との会話も途切れてしまうだろう。しかも、実際は趣味といえるほど本を読んだり映画を観たりしている人は稀だ。

 それでも人は趣味を持ちたがる。趣味を持てば人生が豊かなりそうだし、趣味を持っている人は魅力的にも見える。でも、一体、何を趣味にしたらいいのだろうか。

 そんな悩みを持つ大人たちの間で今、「電子工作」に対する注目がにわかに高まっている。電子工作といえば、基板の上に様々なスイッチや簡単な電子回路を設計製作するアレだ。男子なら一度は、小中学生くらいの頃に何かを工作した経験があるのではないだろうか。スイッチを押さえれば電球が光る。たったそれだけのことでも、何ともいえないワクワクと、他では得難い達成感を味わうことができる。しかし、理系の人間ならともかく、高度なものになると文系の人間には途端にハードルが高くなってしまう。スイッチを押せば電球がつくような装置は一個作れば充分だ。とはいえ、それ以上のものを作ろうと思えばかなりの知識が必要になってくる。結局、電子工作の面白さや魅力は感じながらも、初心者以上になることもなく、夏休みの自由研究止まりで遠ざかってしまう人がほとんどだ。

 ところが最近、電子工作が以前に比べて格段に簡単になり、密かな電子工作ブームが訪れている。その立役者になっているのが、2005年に登場した「Arduino」(アルドゥイーノ)をはじめとする、初心者でも簡単に扱えるマイコンボードの進化だ。

 マイコンボードとは、小型のコンピュータ(マイクロコントローラ)とI/O(入出力)ポートを搭載した基板のことで、先ほどのArduinoの場合はインターネット上でマニュアルやソフトウェア言語の開発環境まで簡単に手に入れることができる。これを使えば、これまでの電子工作では必須であった半田付け作業を行わなくても、簡単にプロトタイプ製作をスタートさせることも可能だ。少し慣れれば、Bluetoothモジュールや、赤外線センサーや温度センサーからの情報をもとにモーターを起動したり、音声を出力したり、様々なアウトプット形式の製品開発ができるようになる。

 Arduinoは今や、趣味の範囲から、業務用機器類のプロトタイプ製作、さらには様々なアーティストやデザイナーからも注目を集めているが、先日、ロームグループのラピスセミコンダクタが、Arduinoと比較して待機時の消費電力を90%も削減した、業界最小の低消費電力マイコンボード「Lazurite Basic」(ラズライトベーシック)を発表して大きな話題を呼んでいる。「Lazurite Basic」は、低消費電力で定評のある同社の16bitローパワーマイコン「ML620Q504」を搭載したArduino互換のマイコンボードで、電池駆動の電子工作で今まで実現できなかった長時間駆動を可能にした。IoT(モノのインターネット)に必要な省エネを意識する電子工作ファンやデザイナーにとっては、まさに夢のマイコンボードといえる。同製品は6月からすでにインターネット販売を開始しており、ラピスセミコンダクタは新規参入ながら、今後この分野の勢力図に大きく影響を与えるのではないかと期待する声も多い。

 業界の動向もさることながら、敷居の高かった電子工作が身近になるのは嬉しい傾向だ。「Arduino」や「Lazurite Basic」のお陰で、これまで難しかった電子機器がより簡単に作れるのであれば、大人の趣味としては申し分がない。本格的なブームが到来する前に一足早く、「電子工作」の世界へ足を踏み入れてみてはいかがだろうか。(編集担当:松田渡)