普及に向けて動き出した電子書籍市場。2017年には2000億円規模に成長か

2015年05月23日 20:41

画像・電子書籍の利用率し_わり上昇た_か_やっは_り紙か_良いと言う声も

日本でもいよいよ本格的な普及に向けて動き出した電子書籍市場。新会社設立や企業買収など、水面下で関連企業が動きを見せるている。

 スマートフォンやノートPC、タブレットPCは言うに及ばず、電子書籍や話題のウェアラブル端末、さらには産業機器向けハンディターミナルに至るまで、モバイル機器が花盛りだ。以前は、モバイル機器といえばメインのサポート的な位置づけや、趣味品という印象が強かったが、今やそのイメージは払拭され、最前線で主力端末として使うユーザーも増えてきている。このようなモバイル機器全盛の状況をもたらしたのは、機能や処理速度の向上やアプリケーションの充実などはもちろんのこと、バッテリー駆動の時間が大幅に延長したことが大きいのではないだろうか。

 それに伴って、注目が高まっているのが電子書籍市場だ。ICT総研が2014年10月に発表した「2014年度の電子書籍コンテンツ市場動向に関する調査結果」によると、2013年度の電子書籍コンテンツの市場規模は963億円。同社が予測した1010億円を50億円近く下回る結果となった。しかし、電子書籍市場全体が縮小したのではなく、ケータイ向け電子書籍市場が予測より大幅に縮小した影響とみられている。その反面、スマートフォン・タブレット向け電子書籍市場が拡大しており、2017年度には電子書籍のコンテンツ市場規模は全体で2000億円に膨れるとの予測がなされている。また同調査によると、1年以内に無料コンテンツのみの利用も含めて電子書店を利用したことがあるかという質問に対し、76.7%が利用していないと回答していることからも、電子書籍市場はまだまだ発展途上で、今後、潜在的な顧客が見込めることが期待されている。

 関連企業の動きも、水面下で激しくなり始めている。2015年3月19日、奇しくも同じ日に日本の大手企業が相次いで電子書籍市場で新たな展開を見せた。まず、出版物小売商の最大手である紀伊國屋書店と大日本印刷<7912>は、1億円(出資比率は両社50%ずつ)を出資し、合弁会社「株式会社出版流通イノベーションジャパン」を設立した。新会社は出版流通市場の活性化と新たなビジネスモデルの創出が目的としているが、具体的に挙げているのは紛れもなく、電子書籍とネット書店のサービス強化だ。日本の出版流通市場を支える二社がついに電子出版市場に本腰を入れはじめたことで注目を集めている。また、楽天<4755>も同日、米OverDrive社を約4.1億ドルで買収することを発表した。OverDrive社は図書館や教育機関向けの電子書籍配信サービス「OverDrive」を展開しており、米国をはじめ、カナダや英国など、約50カ国で、世界展開しており、約5000の出版社が提供する250万以上のタイトルを取り扱っている。楽天は2012年に電子ブックリーダーと電子書籍を販売するKoboを参加に加えているが、今回OverDrive社を子会社化することで、日本国内のみならず海外展開を加速させていく方針を明らかにしている。

 これらの動きに呼応するかのように、半導体業界にも大きな動きがあった。

 電子部品大手のローム<6963>は4月15日、電子書籍やウェアラブル端末、産業機器用ポータブル端末の長時間駆動・小型化に貢献する高効率パワーマネジメントICの開発を発表した。同製品は、モバイル向けの省電力プロセッサとして高い実績を誇るFreescale社の「i.MX 6SoloLite」に最適なICとして開発されたものだ。ロームが得意とするアナログ設計技術を駆使し、アプリケーションにおける低消費電力化を左右するスタンバイ時の消費電流を従来比で45%もの削減に成功するとともに、動作時の電力変換効率も82%以上の高効率を達成している。またRTC(RealTime Clock)機能を内蔵しており、メインプロセッサを駆動させなくても時計やカレンダーの管理が可能となっている。さらに、30Vの入力過電圧保護機能(OVP)付Li-ion バッテリーチャージャーを内蔵することで、外付けICの削減を実現。実装面積を従来比20%削減することに成功し、モバイル機器の課題である機器の小型化にも貢献するという。

 半導体業界ではしばしば、技術のめまぐるしい進化を表現する際、日進月歩ならぬ秒進分歩という造語を用いるそうだが、まさに今はそのような状況だろう。日本では普及が遅れていた電子書籍市場が、最新のアナログ技術の後押しを受けて、いよいよ本格的に動き出す時が来たのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)