電波到来方向推定により車両・歩行者の位置検出する「次世代ITS路側インフラ無線技術」が登場

2015年11月22日 14:45

 現在、安全・安心な道路交通の実現に向けて、5.8GHz帯の電波を使用したDSRC路車間通信や、700MHz帯を使用した車車間/路車間通信による安全運転支援サービスが実用化され、ITSにおける電波利用が進んでいる。さらに安全運転支援の高度化、環境対策、快適・利便性向上などの様々な道路交通問題の解決のために、自動走行システム開発が加速している。これらを実現するためには、より精度の高い車両や歩行者の位置測位技術が必須となる。

 沖電気工業<6703>は、電波到来方向推定技術をITSに適用し、車両・歩行者位置検出を実現した「次世代ITS路側インフラ無線技術」を開発した。ETCなどのITS無線通信における電波の発信元の位置を特定する技術を路側機に搭載することで、既存車載器を変更することなく、DSRC通信中の車両の位置や走行車線を検出するシステムを構築できる。さらに通信端末を歩行者に展開することで、より一層の交通安全支援が可能となるという。

 同社では、広く普及したETC・DSRC車載器の活用に着目し、従来製品のDSRC路側機をベースに、到来方向推定アンテナモジュールおよび到来波推定処理などを新たに取り入れた「次世代ITS路側インフラ無線技術」を開発した。この技術は、ETC・DSRC車載器から送信された電波を到来方向推定アンテナモジュールで受信し、アンテナモジュールを構成する各アンテナ素子の経路差から生じる受信信号の遅延量より電波到来の方位を推定するもの。複数の到来波推定装置を使用することでETC・DSRC車載器の位置を特定することができるという。

 そして、今回開発した「次世代ITS路側インフラ無線技術」を用いて、車両および歩行者を対象した測位実験を実施し、30m四方のDSRC通信領域内において、ほぼ±1mの位置精度を確保できることを検証した。さらに路側機の設置条件などによっては±0.5m以内の位置精度を確保でき、GPSと同等以上の測位精度を確認できたという。この実験結果により、電波到来方向推定技術を用いた測位にはGPSに比べ、高精度の測位エリアの形成や測位遅延低減などの優位性があることを確認した。

 沖電気工業は、今回の電波到来方向推定技術を利用した車両・歩行者位置検出の開発を踏まえ、次世代のITSインフラの検討とサービスの適用検証を進めていく方針。また、その他の電波発信位置を推定するシステムとして、ドローンをはじめとするロボットの操縦者位置探索など、ITS用途以外の利用者からの多様なニーズにも柔軟に対応したシステムの提供を積極的に行っていく。(編集担当:慶尾六郎)