「一生を会社に捧げる」「会社に骨を埋める」昭和時代のサラリーマンにとっては当たり前だったこんな考え方は、すでに時代遅れだ。終身雇用や安定という言葉は今も変わらず理想ではあるものの、有名企業とて明日も安泰と安穏としていられる世の中ではない。倒産とまではいかなくても、突然外資系に買収されたり、リストラの憂き目にあったりすることもあるだろう。
これからの時代、自分を守る為に必要なのは、他でもない自分自身のスキルだ。20代、30代の若い世代はもちろん、40代、50代のベテランでも、個人のスキルを磨いて、不測の事態にも対応出来る「転職力」を身につけておく必要がある。
そこで今、注目を集めているのが「習い事」だ。「習い事」という言葉には、幼い子供がスイミングスクールに通ったり、習字を習ったりと、微笑ましいイメージもあるが、「大人の習い事」は、もう少し現実的かつ切実だ。
大人の習い事で最も人気が高いものは「英会話」。今の時代、英語は話せて当然のスキルであり、話せなければ大きなチャンスを失うことにもなりかねない。「うちは町工場だから英語なんて必要ない」などと言ってもいられない。日本の高い技術力を求めて、諸外国のエージェントが下町の町工場を訪れることは珍しくないのだ。また、海外からのオファーを待っているだけではなく、低迷する日本市場に見切りをつけて、海外進出を目論んでいる中小企業の経営者も多い。
これからは、たとえ町工場の金型技術者であっても、英語のスキル必要になる機会もあるだろうし、転職の際に有利に働くことは間違いない。逆に、そんなスキルは必要ないという職場なら、将来性は乏しいと考えた方が良いかもしれない。
英会話とひと口に言っても、スクールに通うようなものから、英会話教材を利用するもの、空いた時間を利用してインターネットで個人レッスンを行う方法もあるし、英会話カフェや英会話ダイニングといった店舗に足を運んで、そこに集まっているネイティブたちと会話を楽しむのもいいだろう。
英会話のほかに人気の高い「大人の習い事」は、簿記や医療事務などの資格取得系だ。
資格取得系で最近人気が高いのは、保育士や幼稚園教諭免許だ。仕事を持つ母親やシングルマザー、待機児童が増加していることから、都市部を中心に需要が高まっている。また、高齢化社会に向けて、介護士や福祉住環境コーディネーターを目指す人も多い。
これからの需要増加を見越して、前倒しで資格を取得しておくという手もある。例えば、ここ数年で「整体院」が急速に増えていることから、整体関連の資格は人気が高まっている。また、消費者のコンプライアンスへの関心が高まっていることをうけて、消費生活専門相談員や消費生活アドバイザーなども、将来有益な資格として注目されているようだ。
また、昔ながらの「書道」も人気だ。書道は実務で重宝される場面が多い。例えば、デパートや商業施設で贈答品などの、のし書きや目録の文字、またイベントや式典の際の配布物、ホテルや式場、学校関係、役所、神社、寺社等々。パソコンが普及して、ワープロソフトで容易に文字が印刷出来る世の中だからこそ、血の通った手書きの文字が喜ばれる場面も多い。また、実務書道の資格を取れば、独立して自宅で書道教室を開講することも出来るので、女性を中心に習う人が多い。
楽しみながらスキルアップを目指すことは、転職力をつけるとともに、人間力も大幅に上げることが出来る。また、何かに夢中になったり、目標を達成することで、ストレスの発散にもつながる。社会的に不安なことの多い今だからこそ、大人の習い事は必要なのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)