格安スマホ市場が盛り上がりを見せている。今年2月にはイオングループが「イオンモバイル」としてMVNO事業に本格参入し、通話アプリ最大手のLINEも今夏を目処に「LINEモバイル」を開始すると発表した。
MM総研が昨年12月に発表した「国内MVNO市場規模の推移」によると、国内のMVNO回線契約数は2015年9月末で3,642万回線に達し、16年3月には4,000万回線を突破すると予測されている。
MVNOとは、携帯大手から回線を借り受けて独自のサービスを提供する「仮想移動体サービス事業者」を指す。MNVOは携帯大手よりも割安な料金設定が魅力で、“格安スマホ”とも呼ばれている。今年2月にはイオングループ<8267>が「イオンモバイル」としてMVNO事業に本格参入し、通話アプリ最大手のLINEも今夏を目処に「LINEモバイル」を開始すると発表した。
イオンはこれまでMVNOの代理店として販売していたが、2月26日からイオンモバイル自体がMVNOとなり、最安値プランを連発した。一方、LINEモバイルは「LINE使い放題プラン」を月額500円(税別)から提供するとし、早くも注目を集めている。
MVNO市場は拡大を続け、現在150社超がしのぎを削って顧客獲得へと動いている。無線通信サービスの免許はどの企業でも受けられるものではないが、MVNOはその許認可を受けた事業者の設備を利用するため、免許を受けていない企業も参入できるのだ。
MVNOは当初、スマホ料金を節約したい40~50代の中高年が主な購買層であったが、最近では市場の拡大が実感できるようになり20~30代のユーザーが増えているという。格安スマホに乗り換えると携帯大手の“キャリアメール”を手放さなくてはならないが、メールをほとんど利用せずLINEをはじめとする通話アプリやTwitterなどのSNSでのやり取りがメインというスマホユーザーも多い。一昔前に比べてキャリアメールにこだわりを持つ人が減ったというのも、追い風になっているのかもしれない。
また、訪日外国人の増加により、利用期間や利用可能容量を限定したプリペイドSIMの需要が伸びている。20年の東京五輪に向けて、さらなる拡大が期待できそうだ。
まだまだ伸びしろがありそうな市場だが、中長期的には怪しいところがある。MVNOはあくまでも携帯大手の回線を制限付きで安く販売する代理業者のようなもので、携帯大手の回線料金次第でMVNOのサービスが大きく左右されるのだ。NTTドコモ<9437>はMVNOへの回線貸出に積極的で、大手3社の中で最安値を維持しているが、他社の顧客を奪う戦略の一環にすぎない。
消費者としては、MVNO事業への新規参入が相次いでいるため、乗り換えのタイミングが難しい。しかし、顧客獲得競争が激しくなるにつれて選択肢が広がり、より自分にあった料金プランを選べるようになったのは喜ばしいことである。(編集担当:久保田雄城)