矢野経済研究所では、国内における理美容市場の調査を実施した。調査期間は2016年1月~3月、調査対象は理美容チェーン、理美容商社・卸、理美容化粧品メーカー、理美容機器メーカー等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに郵送アンケート調査を併用した。
2015年度の理美容市場規模(事業者売上高ベース)を前年度比99.5%の2兆1,658億円と推計した。このうち、理容市場が6,438億円(前年度比99.5%)、美容市場が1兆5,220億円(前年度比99.6%)である。
2015年度の理容市場の内訳は、理髪市場が4,535億円(前年度比99.5%)、理容のその他市場が1,903億円(前年度比99.3%)となった。理容市場は、理容店舗数の減少、来店サイクルの長期化、低価格サロンの台頭による客単価下落などが危惧されるが、身だしなみを整える習慣は根強く、小中学生からサラリーマン、中高年世代にまで幅広く利用されている。消費税増税を契機とした施術価格の改訂時には、多くの理容店が施術内容の充実とセットメニュー化によるお得感の訴求をしており、理容市場規模の落ち込みは軽微にとどまったとしている。
2015年度の美容市場の内訳は、パーマネント市場が3,695億円(前年度比 99.1%)、セット市場が580億円(前年度比99.5%)、カット市場が2,930億円(前年度比99.8%)、美容のその他市場が8,015億円(前年度比99.8%)であった。美容市場も、来店サイクルの長期化、誘客目的の割引クーポンを導入するサロン増加による実勢価格の低下など、客単価の下落による微減推移が続いている。施術価格の改訂に踏み切るサロンもみられるが、顧客獲得競争が激しさを増す中で、固定客離れを起こす可能性も少なくないため、価格改訂に踏み切れないサロンが多いのが現状であるという。
一方で、ヘアケアカテゴリーを中心とした、ヘアケア・スカルプ系の施術とホームケア商品の店頭での物販の売上げは伸長している。消費税増税後の緩やかな消費マインドの回復が進み、減少幅は改善されており、2016年度の理美容市場(同ベース)を前年度比99.5%の2兆1,550億円と予測している。
美的感覚や生活スタイルの合致、費用対効果、スタッフとのコミュニケーションや居心地の重視など、サロンに対する顧客ニーズは多様化している。そのため、大手サロンチェーンでは、今まで以上にブランドと顧客階層を細分化し、施術の質と量の最適化や想定顧客毎のクラス分類によるブランディングを進行させている。また、中・高価格帯で付加価値サービスの提供に重点を置いてきたサロンチェーンでは、成長を続ける低価格サロンチェーンの市場からも顧客を獲得する戦略が求められており、持続的な事業成長のための重要な取り組みとなっているとしている。(編集担当:慶尾六郎)