サプリメントや家電など、新たな成長のキーワードとして注目を集めている美容。例えば美容家電市場は、2011年に野村総合研究所がまとめたレポートによると、2010年には約1200億円規模であったものが2013年には1500億円にも上ると予測されており、男性用化粧品についても、富士経済が2012年6月にまとめた調査結果によると、メンズコスメティックやヘアケア・ヘアメイクなど多くの分野で成長を見せている。こうした中、矢野経済研究所が国内における理美容市場の調査結果を発表した。
同調査では2012年度の理美容市場規模を、前年度比99.4%の2兆2265 億円と推計。内訳としては、理容市場が前年度比99.0%の6690億円、美容市場が前年度比99.5%の1兆5575億円となっている。
理容市場の規模縮小には、男性若年層の理容離れ、顧客の高齢化による来店サイクルの長期化などの理由が挙げられている。しかし一方で、カット料金が2000円未満の低価格サロンの拡大が続いており、特に、カットに特化した均一価格の低価格サロンの伸長が著しいという。約10分の1000円カットを提供する低価格サロンの代表ともいえるQBハウスは、1997年の来客数が5万7000人であってものが、2012年には国内だけで1337万人にまで伸長しており、店舗数も4店舗から440店舗にまで増加している。複数のサロンを経営する大手チェーン経営企業も低価格サロンの業態開発を始めているというから、規模の縮小を辛うじて小幅に留めているのが低価格サロンと言えるであろう。
他方、美容市場は、パーマネント市場が前年度比98.7%の3870億円、セット市場が同99.2%の595億円、カット市場も同99.7%の3000億円と総じて微減となっている。こちらの縮小理由にも来店サイクルの長期化や単価の下落が挙げられている。ヘッドスパ、スキャルプ(頭皮)ケア、炭酸クレンジング、トリートメントなどのヘアケアサービス、付加価値型サービスが定番化しつつあるものの、規模の維持・拡大には繋がっていないようである。
平成24年10月に厚生労働省が公表した保健・衛生行政業務報告によると、理容所の数は減少傾向にあったものが平成23年度には微増に転換、一方美容所の数は平成22年度に微減となったものの、依然として増加傾向が続いている。市場が縮小する中、店舗間の競争が激化している状況が数字の上でも明らかである。生き残るのは資金的な体力のある大手チェーンか、それとも地域に根差した独立系の店舗か。今後の動向に注目が集まるところである。(編集担当:井畑学)