高級ホテルや高級賃貸マンションなどのラグジュアリーは庶民には高根の花ではあるが、ホテルやサービスアパートメントなどによるインバウンド需要の取り込みなど、景気浮揚の一助になるならば大いに歓迎すべき傾向だ
内閣府が発表した「平成28年6月実施調査結果:消費動向調査」によると、数値上ではあるが、わずかに消費が上向いているといえるだろう。この背景には、金融緩和と円安による株高、そして、海外観光客によるインバウンド消費も国内消費を後押ししているとみられる。そんな中、購買意欲を刺激された富裕層をターゲットにした「ラグジュアリー」市場が好調のようだ。
ラグジュアリーとは何だろう。贅沢品や高級品を指す言葉であるのは間違いないが、同じ特別品を指す言葉、例えば「プレミアム」などと異なるのは、ラグジュアリーという言葉が、その商品を取り巻く世界観や空間、そこで過ごす時間など、すべてを包括している点にあるのではないだろうか。ただ単なる贅ではなく、その商品、そのブランドでしか味わうことができないオンリーワンの世界観こそがラグジュアリーなのだ。
ラグジュアリーを唱える商品として代表的なものは、ホテルや住宅だ。また、京都の二条大橋畔には、マリオットホテルグループが展開する最高級ブランド「ザ・リッツ・カールトン」の国内4店舗目となるラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン京都」が2014年に開業し、人気を博している。近々では2016年6月27日に、西武グループ初の本格複合施設となる「紀尾井町タワー」の高層階部分で、欧米ビジネス客をターゲットにした、プリンスホテル系列最高級ブランド「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」が開業した。
また、住宅では「六本木ヒルズレジデンス」や「東京ミッドタウン」などに代表される 大規模な高級賃貸マンションが人気を維持しており、東京のみならず、全国の都市部で市場規模を拡大している。また、高級賃貸の中でも、洗濯、掃除、フィットネスなど様々なサービスが付いているサービスアパートメントも人気がある。
とくに最近の注目物件としては、6月23日に積水ハウスとフレイザーズ社が開発を発表した高級サービスアパートメント事業だ。フレイザーズグループはシンガポールに本社を置き、ホテル、サービスアパートメント事業をヨーロッパ、アジア、中東を中心に世界に展開するデベロッパーだ。今回、開発が発表された「フレイザースイート」は同社の最高級ブランドで、日本初進出となる。開発予定地は東京赤坂5丁目エリアで、延床約15,000㎡の開発が計画されており、積水ハウスは事業主として開発し所有、フレイザーズ社は運営を担当する。時期的にみても、これから確実に需要が増すであろう東京オリンピックに向けての上質なホテルニーズを見越したものであるのは明らかで、さらにはインバウンド需要や長期滞在を想定した高級なサービスアパートメントとして、国内外から注目が高まるのは必至だ。
高級ホテルや高級賃貸マンションなどのラグジュアリーは庶民には高根の花ではあるが、ホテルやサービスアパートメントなどによるインバウンド需要の取り込みなど、景気浮揚の一助になるならば大いに歓迎すべき傾向だ。また、海外の有名企業が続々と日本市場に参入し、日本企業と協同で事業を展開することは、日本の住宅ブランドの世界展開にとっても大きなプラス要素になるのは間違いないだろう。ASEANなど、急速に拡大するアジア市場への効果的なアピールになることも期待したい。(編集担当:藤原伊織)