デンソーが、車室内をドライバー席と助手席、後部座席の3つのゾーンに分け、乗員がドライバーのみの場合には、ドライバー席だけを空調することが可能なカーエアコンシステムを世界で初めて開発したと発表。ドライバー席のみを空調する場合、従来のカーエアコンに比べ、使用するエネルギーを通年で約2割削減することが可能だという。
新型エアコンシステムでは、冷風や温風を生み出すエアコンユニットに新構造が採用されている。通常は分かれていないユニットの内部を5つに分け、それぞれをドライバー席向けの2カ所と助手席向けの2カ所、後部座席向け1カ所の合計5カ所に配置されている吹き出し口に直結。このことにより、乗員のいないゾーンへの空調をボタン操作で止めることが可能となり、複数のゾーンを空調する場合にも、ゾーンごとに温度設定ができるようになっている。
更に、従来、暖房運転時のエアコンは、車室内の換気や窓の曇り防止のため、低湿度な外気を多く使用しているが、その分、暖かい空気を車室外に排出していた。しかし、新構造のエアコンユニットを採用したことにより、外気を使用する範囲をフロントガラス手前とダッシュボードの吹き出し口に限定することを実現。車室外に排出していた暖かい空気の量を通常のエアコンと比べて約半減させ、暖房の熱をより効率的に使用できるようになっている。
三菱電機のムーブアイなどルームエアコンでは、人がいる場所だけを空調する機能がすでに一般化している。その為、車室内でのゾーン別空調が現在まで実現していなかったことの方が驚きであるかもしれない。現在は新しいレクサスGSの一部モデルに搭載されているだけとのことであるが、近い将来、大半の車種に搭載されることは間違いないだろう。省エネ効果と利便性とを兼ね備えたシステムが開発されれば、オフィスなどでも、デスクごとに空調を変えられるようになるのかもしれない。