東京商工リサーチによると、東証1部、2部上場メーカー128社のうち、約4割の50社が対ドルの下期想定レートを1ドル=100円に設定していることがわかった。2016年6月に、英国の国民投票で欧州連合(EU)脱退派が勝利し、外国為替市場では約2年7カ月ぶりに1ドル=99円台に突入するなど、円高基調に拍車がかかった。このため、下期以降の為替レートを円高に想定する上場メーカーが多かった。だが、11月の米大統領選後は1カ月の間に10円も円安に振れる想定外の展開になり、このまま推移すると輸出関連企業は大幅に業績予想を上回る可能性も出てきた。
東京証券取引所1部、2部に上場する主なメーカー128社(3月本決算企業)のうち、2017年3月期決算の下期(第3四半期以降)業績見通しでは、対ドル相場1ドル=100円に想定した企業が50社(構成比39.0%)で最も多かった。次いで、105円が42社(同32.8%)、102円が13社、103円が12社、104円が4社と続く。想定レートの最安値は115円だった。
対象の128社では、期初時点の対ドル相場を1ドル=110円とした企業が63社(構成比49.2%)で最も多く、次いで105円が28社(同21.8%)と続いた。下期想定レートを期初と比較すると、「110円から100円」への変更が30社(構成比23.4%)で最も多かった。次いで、「110円から105円」に変更が21社(同16.4%)、「105円から100円」に変更が13社と続く。円高に振れた為替相場を反映し、円高を念頭に置いた想定為替レートの設定が目立った。
2016年のドル円相場は、年初は1ドル=120円付近の円安基調で進んだが、6月に英国の国民投票で「EU脱退」派が過半数を占めると、1ドル=99円台まで円高に振れた。その後、円高基調で進んでいたが、米国大統領選挙でトランプ氏が勝利した以降は、一転し1ドル=114円台まで円安が進んだ。為替レートで円高推移を見込んでいた上場メーカー各社は、急速に進んだ円安相場で業績を押し上げられる可能性が高くなった。
上場メーカー128社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した85社では下期の対ユーロ想定レートの最多は、1ユーロ=110円の30社(構成比35.2%)だった。次いで、115円が23社、114円が9社と続く。最安値は137円だった。なお、期初時点では1ユーロ=125円(37社)の想定企業が最も多かった。
外国為替相場での円安基調は、輸出関連の上場企業には追い風になり業績の上振れ要因となる。ただ、米国大統領選の結果に端を発した「トランプ相場」の円安ドル高は、米国新政権への期待先行だけに、いつまで続くか不透明感を拭えない。さらに円安の持続は輸入物価を押し上げ、コスト高を招くだけに輸入依存度の高い企業には逆風だ。特に、中小企業では円安が徐々に企業体力を消耗させる要因になる可能性もあり、今後の為替相場の動向には注意が必要だとしている。(編集担当:慶尾六郎)