11月の「円安」関連倒産は3件 中小企業の経営に与える影響が大きく今後の為替相場の動に注目

2016年12月05日 07:11

 11月のドル円相場は、9日に1ドル=101円台で推移したが、米国大統領選挙の結果が判明した以降は、次期政権での財政支出拡大の期待もあって、24日の東京外国為替市場では1ドル=113円台まで急激に円安が進んだ。113円台になったのは、3月29日以来約8カ月ぶり。さらに堅調な経済状況を背景に米国の連邦準備制度理事会が12月にも利上げに踏み切るとの思惑が広がり、金利上昇が見込んだドル買いの動きが進んだ。

 東京商工リサーチによると、2016年11月の「円安」関連倒産は3件(速報値:11月30日現在、前年同月13件)で、3カ月連続で前年同月を下回った。一方、「円高」関連倒産は1件(前年同月1件)発生した。過去の円高時のデリバティブ取引の損失などを主な原因とするケースで、2カ月連続の発生になった。11月のドル円相場は1カ月間に10円超の急激な円安が進んだ。為替変動の大きな振れはコストアップ要因になり、中小企業の経営に与える影響が大きいため、今後の為替相場の動きからは目が離せないとしている。

 11月の倒産事例として水産物卸のエルビー(東京都)がある。同社は、築地場外の水産物卸売会社。輸入水産物を主力に扱い、平成19年7月期には売上高約2億5,000万円をあげていた。しかし、競争激化から販売が落ち込み、22年7月期の売上高は1億2,150万円にとどまった。この間、他社経由から直接輸入を増やすなど対策を講じたが、円安進行で仕入コストが上昇し、資金繰り悪化から破産を申請した。負債総額は4,300万円。

 また、寝具卸ほかのヒラカワコーポレーション(東京都)は、寝具・アパレル衣料などの卸売会社。中国に生産拠点を順次開設して寝装具や畳表などを中心とし、平成9年1月期の売上高は23億8,338万円をあげていた。20年に発売した「ひんやりジェルマット」が、東日本大震災以降の電力不足をきっかけに節電アイテムとして爆発的な注文が入り、24年1月期は売上高42億5,477万円と急伸した。

 しかし、28年1月期は注力していた新素材の人工羽毛の「アイダーウォームス」が暖冬により販売が低迷し大幅な減収となり、1億3,703万円の赤字へ転落した。さらに、新製品の投資負担や円安によるコストが上昇し、資金繰りが悪化。28年2月より金融機関に対して借入返済のリスケなどで凌いでいたが、支えきれなくなり破産を申請した。負債総額は19億4,700万円。

 食品輸入販売の山青貿易(東京都)は、農・水・畜産物などを中心に取り扱う輸入販売会社。中国から輸入し、国内食品メーカーなどに販売していた。冷凍食品大手メーカーなどにも取引実績を有し、平成24年7月期は売上高約62億円を計上していた。

 しかし、円高時に発生した為替デリバティブ取引に伴う損失が発生したことが経営の負担となり、債務超過に陥っていた。このため、中小企業再生支援協議会による支援を得ながら第二会社方式による再建を模索し、会社分割して主要事業を関連会社に承継させたうえで、株主総会の決議により解散し、特別清算を申請した。負債総額は15億円だった。(編集担当:慶尾六郎)