昨年12月、内閣府が行った「森林と生活に関する世論調査」によると、住宅を建てる場合の工法については、81%が「木造住宅を選びたい」と回答している。震災後であってもなお、この結果は、日本人の木造住宅に対する愛着が感じられ、古来から「木」の温もりと共に生活してきたという気質が受け継がれていると言っても過言ではない。
東日本大震災以降、人々の”住まい”に対する意識は劇的に変化した。耐震性の向上に関しては建物の揺れそのものを吸収する装置などを取り付けた「制震構造」や、建物を地面から浮かせるなどして地盤との間に地震を受け流す装置を設置し、揺れから守る「免震構造」など、より細かく技術的に進歩を遂げた耐震構造を求める傾向になった。また、エネルギー問題に直面したことにより、太陽光発電システムや家庭用燃料電池を搭載し、省エネだけではなく、創エネ設備を採用した木造住宅も増加傾向となった。それだけ大きな意識変化が”住まい手”の中にも生まれ、古き良き佇まいの木造住宅においても、最新の技術が備わっているという新たな認識が広がっている。
一方、木造住宅の伝統を大切にし、地域特性に合った暮らしの文化を現代に融合させる動きもある。
3月21日に行われた「日本ぐらし館」主催による『地域環境に学ぶ木造住宅の未来』と題したシンポジウムでは、三方を山に囲まれ、厳しい自然環境に強いとされている「京都」の木造住宅の未来について、鉾井修一京都大学大学院教授及び、林康裕同大学院教授の講演や、他にもパネルディスカッションのコーナーを設け、地域特性にあった木造住宅に関する内容が数多く語られた。特に、伝統的な都市住宅である京都を代表する家屋「京町家」の特徴でもある”吹き抜け”の工法を現代に生かす考え方など、興味深い研究発表もあり、会場を盛り上げるには十分の内容だった。共催のジャーブネットを主宰するアキュラホーム宮沢社長も「このシンポジウムを通じ、もう一度本質的に住文化、そして住まいにおいて木を使うということを学び、実践していくということが大事」とした。
日本の風土に合い、そして長く受け継がれる文化とも言える木造住宅。単独世帯や高齢者世帯が増え、住まい手の暮らし方自体も大きく変化してきてはいるものの、「木」の温もりに癒されるということはいつの時代でも変わらないはずだ。その部分が受け継がれていれば、環境の変化や技術革新があっても、未来の木造住宅は日本人に愛される住宅であることは間違いないであろう。