米国の自動車市場は米国型“ガラパゴス”市場で、グローバルではまったく売れない大きなピックアップトラックが跋扈する特異なマーケットだ。このセグメントではフォードが強力だが、日本メーカーも多彩なモデルを投入する。写真は昨年「ベスト・イヤー・トラック」となった、米国生産のホンダ・リッジライン
日本自動車輸入組合(JAIA)の発表によると、2016年の外国メーカー車の暦年販売台数は29万5114台で前年比103.4%の伸びを示した。登録車に占めるシェアは9.1%と10%の大台も見えてきた。日本自動車販売協会連合会によると2016年、軽自動車を含めた日本国内で売れた新車の台数は497万0260台で、前年比98.5%という新車販売が減少するなかで輸入車の販売が伸びている。
こうしたなかで、トランプ米大統領が「日本の自動車市場は閉鎖的だ」と語気を強めている。しかしながら国内の自動車市場では、登録車に占める輸入車シェアは4年連続で過去最高を更新した。なかでもドイツ四天王ともいわれるメルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディがベスト4を独占する強さを見せた。全般に欧州車は好調を維持し、攻勢を強めている。
逆に米国車メーカーは、ゼネラル・モーターズ(GM)の中国販売など一部を除いてグローバルで売れない。米国車メーカーは、アメリカ市場だけに受け容れられるクルマしか作っていない、ある意味で“ガラパゴス”なメーカーだ。
米ブランド車の日本販売は苦しい。2016年にはフォード・モーターが日本販売から撤退した。米GMも販売台数が1300台程度にとどまる。唯一の例外は個性派のJEEP(クライスラー)で、9388台を販売した。が、日本国内における米国車販売台数は合わせて1万3500台ほど。輸入車に占めるシェアも1995年には30%を超えていたが、2016年は約5%弱まで落ち込んでいる。
「日本車は米国で3割を超えるシェアを握っている。それに比べて、日本での米国車のシェアは低すぎる」とトランプ米大統領は吠える。しかし、日本のメーカーは1980年代から米国の求めに応じ、米国で現地生産を進めてきた。一方、米国車メーカーは、リーマンショック後の2009年以降、東京モーターショー(TMS)への参加を見送っている。今年秋に予定しているTMSにも参加する予定はない。日本市場から撤退しているのが現状だ。
日米自動車メーカーの国際化戦略を対比させる と、米国車メーカーを代表するGMは欧州にオペルを、中国に現地法人設立、フォードは欧州フォード社を立ち上げ、各国・地域の市場を基本的な単位とし、現地法人がモデルプランを企画して独立して競争する「マルチドメスティック戦略」を推し進めた。米国車が日本で売れない現状に陥ったのは、そうしたマーケティング戦略に日本市場は入っていなかったからではなかろうか。
一方、日本自動車メーカーや欧州メーカーは、本社が海外の子会社に対して広範で強い世界的マーケティング戦略と調整で臨み、それがもたらすコストの共同負担と製品差別化の推進によって競争優位性を獲得する「グローバル戦略」を採用した。欧州車メーカー、なかでもドイツ勢は、その確かな「グローバル戦略」で、米国でも日本でも、もちろん欧州でも売れるクルマづくりを実践してきた。
トランプ米大統領は、不動産王の企業経営者だった。こんなことは、とっくに理解しているはずなのに、「日本の自動車市場は閉鎖的だ」と吠える。理解し難い行動だとしか思えない。(編集担当:吉田恒)