昨今、健康志向の高まりから、歩数計測機能が内蔵された機器や道具が増えてきた。
既存の万歩計だけでなく、スマートフォンのアプリや、スマートウォッチなどのリストバンド型のウェアラブル端末、さらには、小さなブローチ型の万歩計など、ユニークな商品も次々に登場しており、静かな万歩計ブームが到来している。
万歩計といえば、歩数を計測して数値を教えてくれるもので、その名の通り、毎日一万歩を目標にしている人は多いだろう。しかし、近頃の万歩計は歩数を数えるだけでなく、ゲーム的な楽しみを付加したものも多い。
例えば、玩具会社のタカラトミーアーツが発売している歩数計「ポケットイン 日本一周歩数計の旅」は、日本一周が疑似体験出来る万歩計で、発売からわずか7カ月で累計販売台数約7万個の大ヒットを記録した人気商品だ。リアルな歩数をもとにバーチャルで全国各地を歩き続け、訪れた土地の地名や名産品、名所などの地域情報を楽しみながら、日本一周約18850キロメートルを歩くという。
スマホのアプリでは、ナビタイムジャパンが提供している「ウォーキングNAVITIME-ALKOO」などが人気である。歩数計・グラフなど、機能が満載のウォーキングツールで、歩いた場所や写真を自動で保存してくれるため、アルバム感覚で後で見直して楽しめると好評だ。こういった歩数計測アプリの中には、歩いた距離によってWAONポイントがもらえるキャンペーンなどを開催したり、既存のサービスと上手く連動して、歩く楽しみとモチベーションの持続を提供しているものも増えている。
そんな中、歩数計自体の精度や性能も向上している。
そもそもスマートフォンやウェアラブル端末で歩数計測を行うためには加速度センサが必要だ。とくにフィットネス分野で利用する場合は、歩数を計測するだけでなく、「歩いている」という状態も検知できなくてはいけない。手で振ったり、ちょっとした振動でもカウントしてしまうと正確なデータを得られなくなってしまうからだ。また、他のセンサ同様、小型で低消費電力、かつ高精度なものが求められている。
最新のものでは、ロームグループのKionix, Inc.(カイオニクス社)が開発した、3 軸加速度センサ「KX126」などがある。この製品は、最大 25.6kHz の高いサンプリングレートと、傾きや自由落下、画面の向きの変化、タップとダブルタップなどを検出する、独自の豊富なモーション検出アルゴリズムを内蔵した高性能加速度センサである。2x2x0.9mmという小型パッケージ化にも成功し、さらには、一般的な加速度センサの消費電力約150uAに対し、わずか100nAで稼働するという低消費電力化も達成している。小型・低消費電力・高精度という特長を網羅した、まさにウェアラブル端末の歩数計測に最適な加速度センサと言えよう。スマートフォンやウェアラブル端末はもちろん、同センサを用いれば歩数計機能向けに個別回路を設計する必要がなくなり、開発者の設計負荷も軽減するので、今後は他のデバイスなどへの搭載も広がりそうだ。
歩数計測は、健康やフィットネス分野だけでなく、見守りなどの介護分野や物流、職場の業務効率改善などへの活用も進んでいる。世界的に導入が加速しているIoTなどとも連動すれば、これまで想像もしなかった活用方法も生まれるかもしれない。ほんの10年前までは、ただただ歩数をカウントするだけだった万歩計が、今後10年でどこまで進化するのか楽しみだ。(編集担当:藤原伊織)