自治医大ら、気温・体動など環境評価を同時に行う血圧計の開発へ

2017年06月18日 15:58

画・自治医大ら、気温・体動なと_環境評価を同時に行う血圧計の開発へ

より精度の高い血圧測定および測定結果からのリスク評価といったニーズに対応すべく、自治医科大学の研究グループとエー・アンド・デイは、気温や気圧、体動といった環境生活信号と生体信号を同時に時系列評価できる携帯型自動血圧計を開発した。

 昨今、健康維持・増進を目的とした血圧や心拍の日常的なモニタリングが重要視されている。一方でこうした生体信号が、1日を通じた血圧変動性のみならず測定環境に大きく影響を受けることが、身体状態の指標とするうえでの欠点となっていた。より精度の高い血圧測定および測定結果からのリスク評価といったニーズに対応すべく、自治医科大学の研究グループとエー・アンド・デイは、気温や気圧、体動といった環境生活信号と生体信号を同時に時系列評価できる携帯型自動血圧計を開発した。

 米ストーニーブルック大学の研究によれば、診察室血圧が正常であった対象者のうち16%弱は24時間モニタリングで「仮面高血圧」と診断されている。仮面高血圧では脳卒中・心筋梗塞リスクが一般の3.86倍にもなるという。今回開発された携帯型自動血圧計では、血圧測定に加え体動を検知する加速度センサー、環境情報を取得する気温センサーと気圧センサーを実装。従来診察室血圧や家庭血圧の測定では難しかった白衣性高血圧、仮面高血圧、早朝高血圧などの評価が24時間を通して可能となる。

 自治医科大学の研究グループは2009年1月より、「日本人における自由行動下血圧追跡研究(Japan Ambulatory Blood Pressure Prospective Study:JAMP研究)」を開始している。同研究では、全国の心血管ハイリスク患者7200人を対象とした24時間血圧測定をもとにデータバンクを作成。血圧コントロール状況の大規模把握とともに、24時間血圧の構成成分が、どの循環器疾患の発症予測に重要であるかの解明を目的としたもの。同研究を通して、24時間血圧の血圧変動性が循環器疾患のリスクとなることや、血圧変動要因に生活環境因子が関連していることが見いだされた。今回のエー・アンド・デイとの共同研究では日常生活における個々のリスク因子を検出し、環境生活信号を同時に時系列評価できる携帯型自動血圧計の開発につなげた。

 今後は内閣府による革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」において同血圧計を活用し、ビッグデータに基づく臨床エビデンス構築を目指す。また、個人の血圧情報に加え、同時に多種の環境時系列データを自動取得するシステムを構築し、取得したデータよって個人の循環器疾患イベントを予測するシミュレーターアルゴリズムの基礎開発を進めていくとのこと。(編集担当:久保田雄城)