今、業績を上げている企業が実践している、ある一つの共通点

2017年06月11日 15:49

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日本人は長時間働く人を「働き者」と考える。これは、高度経済成長期に昼夜を問わずガムシャラに働いて日本の経済を盛り上げた経験に起因していると思われる

 夏休みを目前に控え、休暇の使い道を考えはじめている人も多いだろう。日本の企業では大体、5日程度の夏休みが一般的だ。中には、そこに有給休暇を加えて大型連休にしてしまう人もいるようだ。旅行やレジャーを楽しもうとするなら、せめて1週間や10日の休みは欲しいものだが、日本人は、そんな長期のバカンスをとることに後ろめたさや罪悪感をもってしまう。

 一方、欧米諸国では長期休暇が当たり前の国が多い。例えば、フランスでは労働者がバカンスをとることは法律で義務付けられている。今から30年以上前の1980年代頃にはすでに、労働者に25日間の有給休暇を与える制度が確立している。

 欧米諸国と日本の仕事に対する考え方は大きく違う。

 日本人は長時間働く人を「働き者」と考える。これは、高度経済成長期に昼夜を問わずガムシャラに働いて日本の経済を盛り上げた経験に起因していると思われる。だから未だに、休暇は少なく、残業も多い。近年になって、サービス出勤やサービス残業などが社会問題に取り上げられることが多くなったものの、休日出勤や残業事態を奨励する風潮は根強く残っている。ましてや、上司が残業している前で先に帰宅しようとしたものなら、「怠け者」「非常識」と罵られてしまうこともあるだろう。ところが、EU諸国では全く逆で、残業する人は「仕事ができない人」という認識が強い。決められた時間の中で成果が出せない人は、他よりも能力が劣ると捉えられるようだ。

 どちらの考え方が正しいのかは単純に断定することはできないが、「労働生産性」という面だけを見れば、自称「働き者」の日本人は、プライベートな時間を尊重する欧米の人々よりも劣っている。

 EU諸国を中心に日・米を含む35ヶ国の先進国が加盟する国際機関・OECD(経済協力開発機構)が2017年5月に発表した「生産性指標総覧(Compendium of Productivity Indicators)」によると、2015年の日本の労働生産性は、G7諸国中最低の45.5米ドル。OECD平均(51.1米ドル)を5.6米ドル下回っている。一方、フランスは67.5米ドルでG7諸国中2位。この差は大きい。

 労働生産性は、従業員1人当たりがどれだけの付加価値を生み出しているのかを表す指標なので、それだけですべてが判断できるものではないが、少子高齢化社会の日本においてはとくに今後、少ない従業員でどれだけの価値を生み出せるかが大きな課題となるのは間違いない。

 休暇と労働生産性の因果関係が学術的に証明されているわけではないが、日本でも近年、残業を減らしたり、休暇を増やしたりする企業が少しずつ増えており、多くの場合、それが業績にもプラスに働いているようだ。

 例えば、政府が主導する「働き方改革」に先駆けて長期休暇制度をスタートさせた住宅メーカー、アキュラホームでは2016年度(2017年2月期)の業績は、売上高38017百万円(前期比1.7%増)、営業利益1053百万円(前期比19.8%増)となり、増収増益となっている。今どき、長期休暇制度は目新しくないと思うかもしれないが、住宅業界、とくに中堅の住宅メーカーにおいて、一週間以上の長期休暇制度の導入は異例中の異例。しかも同社では、年末年始休暇や夏季休暇とは別に9日間の連続休暇を取得することを推進しているのだから驚く。これを実現するためには、早期から予定を立て、同じ部署内で情報共有、チーム力を強化することが必要となる。その結果、社員同士のコミュニケーションや結束力が高まる効果も期待できそうだ。

 また、スーツ販売大手のはるやまホールディングスは今年4月から、月間の残業時間がゼロだった社員に対し1万5000円を支給する「No残業手当」制度を開始している。同社では「社員の健康を応援し、まず社内から健康で元気になる」と目標を掲げており、その一環として考案されたものだが、この制度の導入によって、社員に支給している残業代を年間8000万円程度圧縮できる見込みだという。

 休むことと会社の業績の因果関係は明らかではないものの、今、元気な企業はどこも、社員や従業員の休暇や健康に対する意思が高く、すでにそれを実践していることだけは確かなようだ。(編集担当:藤原伊織)