市場調査会社のReportsn Reportsが公開している市場予測レポートによると、世界のIoT市場は2023年には1950億ドル(約22兆円)にまで成長する見通しだ。2016年のIoT市場規模は160億ドル(約1兆8000億円)なので、たった7年間で10倍以上の市場に成長するということになる。
ところが、総務省がIoTへの期待度を調査したところ、日本の企業は他国の企業と比べて、総じて低い水準の回答になったという。とくに非ICT企業でIoTへの期待値が低い傾向があり、これが日本のIoTの導入率や投資状況にもマイナス面で大きく影響していると思われる。アメリカを中心に今後、世界規模で発展を遂げるとみられるIoT市場の中で、日本だけが取り残されてしまわないよう、国を挙げての啓蒙が必要な時期にきている。
IoT導入の最大のメリットは、インターネットを介してつながることによって、あらゆるものを遠隔で操作できるようになることだろう。家電のような身近なものから、インフラやセキュリティシステム、産業ロボット、災害対策など、機器類の遠隔操作や連携操作ができるようになると得られるメリットは計り知れない。ただし、ただ単に繋がるだけではリモコンと大差がない。大事なのは、現場の端末からの情報をより迅速に正確に収集し、それを分析して、いかに的確な制御でフィードバックできるかということだ。
そのためには正確なデータを収集・分析するためのより高精度な技術が必要になる。
まず、現場の状態の計測、把握を「センシング」技術で行い、そこで得たデータを「ネットワーキング」で効果的に収集する。集めたデータは「アナリシス」技術で分析・評価し、その結果をデバイスやシステムに「フィードバック」して指示や制御を行う。これらの4つの要素が相互に機能してはじめて、IoTは大きな価値を生み出す。
そして、その鍵を握るのは、ワイヤレスセンサーネットワーク(WSN)だ。複数のポイントに配置した多数のセンサノード間で測定したデータをワイヤレスで結ぶことで、センサを単体で用いた場合には得られなかったメリットが生まれる。
日本の電子部品メーカーなども現在、このIoT向けのWSN技術の開発にしのぎを削っている。今年5月に東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレスジャパン2018/ワイヤレスIoT EXPO 2017」では、東洋電機や村田製作所、京セラコミュニケーションシステムなど多数の関係企業が出展し、各企業のWSN技術における最新技術を披露。29123人の来場者で大いににぎわった。
こうした各企業の取り組みが活発化する中、産学共同でのWSN開発も活発になってきている。
例えば、今年6月には京都で開催されたVLSI シンポジウムにて、電子部品大手のロームが中国の清華大学と共同で、強誘電体メモリ技術を用いた無線センサノード用の超低消費電力システムオンチップに関する技術とそのパフォーマンスについて共同発表し、モジュール動作のデモンストレーションを行った。今回、ロームと清華大学が開発した、このIoT 無線センサノード用不揮発SoCは、ロームの強誘電体メモリ技術を利用したもので、従来製品と比較し、動作速度が3.9 倍速い上に、11倍高いエネルギー効率を達成している。これにより電力供給が安定しない場合でも、より正確にデータの測定や通信ができるようになるという。
IoTがもたらす世界的な波は、まだ始まったばかり。今後、日本も巻き返すことは十分可能だ。(編集担当:藤原伊織)