2月22日、マツダは最大約1628億円の公募増資を決議したと発表した。それとは別にメーンバンクの三井住友銀行などから劣後ローンで700億円を調達する。増資分の発行価格は3月8日までに決まり、払込期日は12から15日の予定。20%を割り込んでいた自己資本比率は約26%に上がる。このファイナンスで「震災、円高、タイの洪水」のトリプルパンチで傷んだ財務状況が改善され、輸出依存体質から脱却するためにメキシコ新工場の建設、新興国での設備増強を進めることができ、環境対応車の生産や次世代の研究開発に積極投資できるようになる、とマツダでは説明している。
市場の反応は良くなかった。2月20日の終値は161円だったが、21日は増資情報が漏れて一時138円まで下げ、22日は一時150円まで切り返したものの、23日の終値は137円で、日経平均株価が1.16%上昇した3日間で逆に14.9%も下げた。希薄化率が最大約40%になり既存株の1株当たり利益が大きく損なわれるのが嫌気され、シティグループ証券は22日に投資判断を2(中立)から3(売り)に、目標株価を140円から120円に下げ、マツダ株は不名誉にも23日前場の値下がり率ランキングでトップに躍り出た。
投資家がマツダ株を売る直接的な動機は「希薄化懸念」だが、リーマンショック以来、不人気で株価が100から200円台に低迷する「低位株」の代表として推移してきた背景には「エコカーで出遅れている」というイメージがある。だが、本当にそうだろうか。
トヨタ、ホンダが先行するハイブリッド車(HV)、三菱、日産がエコカー戦略の中心に据える電気自動車(EV)に対抗して、マツダは「第3のエコカー」として超低燃費ガソリンエンジンの研究開発に力を入れて成果も出している。昨年は「デミオ・スカイアクティブ」がガソリン1リットルで30キロ以上も走って「プリウス」の38キロに迫り、自動車評論家やアナリストのような玄人筋からは悪くない評価を受けていた。だが、同じカテゴリーに日産が参入してきた。
PHV(プラグイン・ハイブリッド)やEVの華やかな話題にさらされる消費者は、マツダのエコカーに対し「超低燃費だろうとガソリンだ」「化石燃料100%で何がエコカーか」「エコカー減税の対象にしていいのか」など色眼鏡で見てしまいがち。業界スズメは「第3のエコカーは悪くないが、相手が日産では勝ち目が薄いね」としたり顔で言う。研究開発についてはロータリーエンジンや水素自動車の開発が商業的な成功に結びつかなかった過去がいまだに語られる。「2回もつぶれかけた」と古傷にさわる人もいる。そうした偏見やら懸念やら固定観念やらが複雑にからまり、「マツダは巨額増資してもうまくいくのか?」という疑問が膨らんでいく。
かつて、マツダのクルマは「安物」「田舎くさい」「ガラが悪い」とからかわれ、「研究開発は失敗続き」と揶揄され、経営危機でフォードと提携すると「黒船が来て乗っ取られた」と騒がれ、最近では「エコカーで出遅れた」とレッテルを貼られ、巨額増資を発表すると「株主軽視だ」と叩かれる。そんなマイナスイメージを払拭するためにも、せめて、調達した資金で良いクルマを作り、世界で売れて一矢報いてほしいものだ。