厚生労働省は来年度において、残業時間削減に成功した中小企業に対して現在支給している助成金の制度を拡充していく方針を固めた。現在、残業時間の上限を下げそれを達成することが出来た企業に対して助成金を支給している『職場意識改善助成金・時間外労働時間制限コース』というものがあるが、この中身を変更することによって対応を行うとされている。また、休日数を増やした企業に対しては更に助成金の増額を検討しているということだ。この法案は、9月末に行われる臨時国会の場で提出される予定とされている。
既存の制度では「中小企業が一人当たりの残業時間を月45時間、年360時間以下に設定しそれが達成された場合」に企業が負担した経費の一部として最大で50万円を支給している。今回の変更はこの制度を拡充させるもので「一人当たりの残業時間を月80時間、年720時間を超過していた企業が、残業時間を同時間にした場合且つ達成した場合」においても最大で50万円支給するものとされている。
厚生労働省の担当者によれば、既存の職場意識改善助成金・時間外労働時間制限コースでは残業時間の設定や達成を検討する猶予期間は1か月程とされており、短いという意見が挙がっていた。既存の目標である「月45時間、年360時間」という目標はそのまま残した形で、さらに新たに加える「月45時間、年360時間以下」という目標を設定・達成した企業には、既存の目標及び新たに目標達成の報酬として100万円を支給するということだ。全ては残業時間削減に意欲を持って取り組んでもらうということが狙いだ。
このことに加え従来週休2日制であった企業が休日を増やした場合も、追加で助成金を支払うとしている。休日を1日増やすにあたり25万円の増額を検討しており、最大4日で100万円を検討している。
新たな残業時間に関する制度では、仮に中小企業が残業時間・休日日数が規定の目標を達成すれば最大200万円の助成金を支給することとなるが、厚生労働省担当者自身も「200万円という金額がどう受け止められるかは難しい」と発言した。ネット上でも、「助成金の申請はめんどくさい。」「労力に見合わないから、効果は無いのでは?」といった疑問の声も挙がっている。また、実際には上辺(書面上)だけの契約となるのではないかという懸念点も挙げられている。同担当者は「労基法の遵守が一番ですが、万が一不正が見つかった場合は、返還命令や刑事告訴などの措置を取ります。そういった懸念への対応策や、枠組みの設定なども順次検討していくつもりです」と対策に前向きな姿勢を見せた。
従来マスコミ等でいわゆる大手企業の残業時間の取り組みに関して報道がなされてきたが、中小企業にスポットライトが当たりはじめたということは良い傾向だ。今後の流れを注視していきたい。(編集担当:久保田雄城)