9月25日発表の政府月例報告によれば、日本経済は引き続き緩やかながら回復基調にあり、高度成長期の長期拡張「いざなぎ景気」を超えるとも言われている。しかし、その実感が伴っていない。その背景を「月例報告書」から分析する。
9月25日、内閣府は「月例経済報告」を公表した。この中で政府の景況判断は引き続き「景気は、緩やかな回復基調が続いている。」に据え置いた。また、先行きについては「雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあっ て、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融 資本市場の変動の影響に留意する必要がある。」としている。
基調判断の詳細は、「個人消費は、緩やかに持ち直している」「設備投資は、持ち直している」「輸出は、持ち直している」「生産は、持ち直している」「企業収益は、改善している」「企業の業況判 断は、改善している」「雇用情勢は、改善している」「消費者物価は、横ばいとなっている」となっている。また、政策態度として「日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、 2%の物価安定目標を実現することを期待する」としている。
日本経済の構造を細かに見ると、個人消費は、緩やながら持ち直している。これは実質総雇用者所得が緩やかに増加しているからであろう。また、消費者マインドは持ち直し、消費総合指数は、7月に前月比0.3%増となっている。しかし家計調査(7月分)では、実質消費支出は前月比1.9%減で一進一退の状態であるとも言える。外食に増加傾向がみられるものの耐久財は自動車を除き横ばいである。先行きについては、「雇用・所得環境が改善するなかで、持ち直していくことが期待される」としている。
今回の「いざなぎ越え」とも言われる景気回復は設備投資に牽引されている部分が大きい。また、最近の米国と欧州の景気回復による輸出の増加も大きく寄与していることは間違いない。堅調だった住宅建設はこのところ弱含みのようだ。
全体を見渡すと、日本経済は回復基調にあるとは言うものの消費による景気上昇寄与度が低いと言える。これはおそらく賃金上昇率が他の伸び率に比べ相対的に低いからであろう。消費者物価の上昇は賃金上昇によるコストプッシュである場合が多い。現在のところ未だこの傾向は見られない。これが消費者物価の充分な上昇を抑制し、2%目標を達成できない理由かも知れない。各種統計指標は全体的に良好な値を示しているにもかかわらず「実感がない好景気」なのは、おそらく賃金上昇を背景にした個人消費の底堅い回復が無いためであろう。(編集担当:久保田雄城)